価格の4割以上が税金のビール。焼酎やウイスキーは何割が税金?
― 第58回 ―
お酒を自宅で造ることを規制しているのは、危ないとか我々の健康を気遣ってのことではありません。お酒には酒税がかけられており、それをきっちり取り立てるための仕組みなのです。日本で作られるアルコール度数1%以上のものすべてに税金をかけているのです。
「けち臭いな」と思う人もいるでしょう。しかし、これがなかなか馬鹿にできないのです。酒造税法は明治29年に制定されました。すると、明治32年には国税の35.5%を占めるほどになったのです。もちろん、地租の税金を抜いて税収第1位です。国が酒税を狙うのも納得でしょう。
そこから、あの手この手で様々な税金が作られ、酒税が占める割合は下がりました。現在(平成28年度)では、国税収入の2.2%となっています。しかし、それでも半端ではない金額です。
酒税の課税額は平成6年度に2兆1200億円となったのですが、そこから徐々に落ちて平成28年度は1兆3195億円にまでなりました。
平成28年度の課税実績では、もっとも課税額が大きかったのは想像通りビールです。その金額、5948億2000万円です。次に、リキュール、発泡酒と来て、その他の醸造酒、清酒、焼酎と続きます。ウイスキーはわずか3.7%、492億8000万円となっています。
酒税はお酒の区分により、1キロリットルあたりいくらと決まっています。ビールであれば発泡性種類なので22万円、麦芽比率25~50%未満のお酒なら17万8125円、25%以下なら13万4250円と言った具合です。ウイスキーであれば、アルコール度数38度未満が37万円で、1度高くなるごとに1万円が追加されます。
キロリットルではわかりにくいので、缶ビールで計算してみましょう。350ミリリットルのビールで、税抜小売価格が200円だとすると、そのうちの酒税は77円となり、消費税を合わせると43%が税金になります。酒税は販売価格に含まれているため我々は把握しにくいですが、なかなかの金額と言っていいでしょう。
アルコール度数25%の乙類焼酎で一升瓶が1500円だとすると、酒税は450円となり、35%の税金がかかっていることがわかります。アルコール度数43%のウイスキーだと、700ミリリットル瓶で基本の酒税が259円で、アルコール度数加算が42円となり、消費税込みで21.3%の課税となります。
製品の価格が上がれば、消費税は上がりますが酒税は据え置きなので、課税割合は下がります。もちろん、もっと安い製品だと、さらに課税割合は高くなります。なお、酒税は国税として徴収され、公務員の給料や道路の維持費などに使われています。
ということで、飲んべえとしての結論は、なるべく高いお酒を飲んだ方が酒税の割合を抑えられるということです。酒税負担が少ない順で列挙すると、ワイン、日本酒、ウイスキー、焼酎、ビールとなります。
税金を考えてお酒を飲むのは馬鹿らしいので必須の知識ではないですが、飲みの場でのうんちくの一つとして頭の片隅にでも入れておいてください。高いワインを開けるときの言い訳に使えるかもしれません。お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
酒税はどうやって決まる? 一番高いのは?
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