夏休み前に急増。退職代行をリピートする若者たちの本音
昨今、その需要が急増している退職代行サービス。パワハラや長時間労働で心身共に限界まで追い詰められた者、「直接、辞めると言うのが面倒だから」という決して褒められぬ理由を口にする者──依頼者たちが抱える背景は実にさまざまだ。
「すでに現時点で、『お盆明けの8月19日に会社に退職の連絡をしてくれ』という予約が殺到しています」
そう語るのは、これまで1000件以上の退職代行案件に携わってきた弁護士・嵩原安三郎氏だ。
「今年の8月18日の日曜日は、小学生の『8月31日』みたいなもの。夕方になって『ちびまるこちゃん』がテレビから流れてくると、否応なしに次の日からの仕事が頭をよぎる。もっとも憂鬱になるタイミングなんです」
そんな嵩原弁護士だが、最近「とあること」に気づいたという。
「特に最近、顕著なのはリピーターが目立ってきていること。1度ならずとも、2度、3度……と退職代行の交渉を依頼してくる『常連さん』が増えてきているんです」
企業側が退職の意思に難色を示すケースが増えているのか、それとも退職代行業者に依頼する労働者たちのハードルが極めて低くなっているのか。
「卵が先か、鶏が先か。考察する余地はおおいにあると思います」
今回は、はからずしも退職代行を「リピート」してしまった男性のエピソードを紹介しよう。
都内IT企業でSEとして働く柴田貴之さん(32歳、仮名)はこれまで2度、退職代行を依頼した経験の持ち主だ。
「最初に働いた会社は長時間労働は当たり前、残業代も出ない。典型的なブラックな労働環境でした。このままではヤバイと思って退職を申し出たのですが、脅しに近い強引な引き止めに3ヶ月ほど遭ったんです」
ネットニュースで退職代行サービスの存在を知った柴田さんは即、弁護士に依頼。代金として3万円を払った。
「依頼したら、その日から会社に行かなくて済みました。必要最低限の引き継ぎも弁護士さん経由で伝達してもらったので、気まずさやストレスはほとんどなく退職できました。あっけなかったです」
その後、期間を置かずに転職したという柴田さん。だが、次に勤務した会社でも受難は続いた。前職と同様、長時間勤務を強いられ、パワハラ上司の下についてしまったのだ。
「上司から無茶な案件を振られて、期限に間に合わせても直前でひっくり返される……の繰り返し。露骨な脅し文句こそなかったですが、上司のため息や舌打ちを聞く度に心が削られていきました。そのくせ、仕事終わりに飲みに連れたがるんです。酒の席でも延々と武勇伝と説教……プロジェクトに関わってるメンバーが入ってるslackも常時見てないと怒るし、24時間監視されてる気持ちになって、辞めたくなってしまった」
8月18日は要注意。夏休み明けの予約が殺到!
「上司のため息、舌打ちで心が萎えた」
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