更新日:2023年04月27日 09:59
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サンマ不漁の原因は、本当に中国の乱獲か?

前年同期比13%の異常事態に

 サンマの記録的な不漁が連日話題になっている。スーパーでは一匹500円を超える値札が立てられ、庶民の味と親しまれたサンマはもはや高級魚である。なぜサンマは獲れなくなったのか……。専門家に話を聞いた。 サンマが獲れない!

サンマ不漁の原因は、本当に中国の乱獲か?

 落語の演目「目黒のさんま」や、「秋刀魚が出ると按摩が引っ込む」ということわざがあるほど、古くから親しまれてきた秋の味覚が、今年は空前の不漁の真っ最中だ。  水産庁が発表した今年10月9日までのサンマ漁獲量は7060tと前年同期の13%にとどまり、過去最低を記録した。例年、8~11月には北太平洋から日本近海にサンマの群れがやってくるのだが、それが秋になっても一向に音沙汰なしなのだ。  この“下手人”としてやり玉に挙がっているのが、中国や台湾の漁船による大量捕獲。日本近海に来る前のサンマを彼らが公海上で捕獲するため、日本にほとんどやってこないという論調が、連日メディアを賑わせている。  だが果たして、サンマ不漁の原因は、本当に外国漁船による乱獲なのだろうか。その真相を探るべく、かつて水産庁在籍時代に諸外国とのタフな漁業交渉で勇名を馳せた小松正之氏に聞いた。 「日本は’03年からサンマの分布調査を行っており、日本近海から西経165度までの北太平洋海域における資源量は、今年は142万tと推定されています。これは昨年よりも3割少なく、特に日本近海のエリアについては、資源量ゼロという数字が出ています」  小松氏によれば、’02~’05年の時点では、北太平洋には300万~800万tのサンマ資源があったというから、激減である。 「ただ、調査データによると日本海域に近くなるほど資源は少なく、遠くなるほど多くなっています。このことから、資源量自体が減少したという見方のほかに、調査範囲外の東の海域に生息域が移っている可能性も考えられます。そうなると当然、日本近海に回遊してくるサンマの数も少なくなり、獲れる絶対数も減少します」  こうしたサンマの回遊状況の変化は、海洋環境の変動に対応したものと小松氏はにらむ。 「温暖化の影響は、サンマが好む浅い海面でより顕著に表れます。宮城県の石巻市沿岸域の海面で4℃、高知県の宿毛市で5℃上昇しているという漁業者・養殖業者の話もあります。そうなると温かい水がフタとなり、海底に積もった栄養分が海面に上がる流れを塞いでしまう。また、湿地帯などの埋め立てにより陸から海に流入する栄養も減少していますから、日本近海は栄養が少ない状態になる。魚も近づいてこなくなるわけです」  実際、同じく回遊魚として知られるサケも日本近海から遠のき、漁獲量はピーク時の3割以下だ。サンマどころか他の魚もいずれ食べられなくなる日が来ると、小松氏は警鐘を鳴らすのだった。
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前近代的な日本漁業の根本的な改革が急務
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