「危険な電気はいらない」自然エネルギー100%プロジェクト
―[原発と闘う小さな島の30年史]―
◆小出裕章(京都大学原子炉実験所)が考える 原発と闘う小さな島の30年史(3)
「危険な電気はいらない」とエネルギー自給を目指す
島にはもう一つの悩みがある。人口の約4分の3が高齢者。介護問題が重要な課題となっているのだ。原発推進派の多い他の地域では補助金が投入されているが、どれもハコモノ建設ばかりで行政サービスは貧弱。そこで、島民たちは自分たちで高齢者介護を完結させるべく、ホームヘルパー講習を集団受講した。2004年には約20人がホームヘルパー3級の資格を取り、2009年には約10人が2級を取得。空き家を利用した寄り合い所も建設中だ。「民宿くにひろ」の国弘公敏さんはこう語る。
「行政に頼れば、そこにつけ込まれてしまう。それなら島の年寄りは島の人間が面倒を見ようと。それに、そのほうがみんな幸せなんじゃないかな」
さらに島民たちは、エネルギー自給も目指し始めた。孝さんが中心となり、「自然エネルギー100%プロジェクト」が始まったのだ。
「危険な電気の押し売りはいらない。『結局、あんたらも原発の電気をもらっちょるじゃろが』と推進派からよく批判されますが、じゃあ自前で作ろうということになりました。島内外から出資者を募り、その基金をもとにして太陽光パネルなどでエネルギー自給しようというものです」(孝さん)
環境エネルギー政策研究所(ISEP)など、外部団体もこのプロジェクトを後押しした。
孝さんは「でも、そもそも代案を出さなければ原発に反対してはいけんのじゃろうか?」と言う。
「代案がなければ危険を一部の人に押し付けていいというほうがおかしい。代案を出すよりも前に、反対する権利があると思う」
⇒(4)小出裕章氏「カネに左右されず、まっとうに生きること」
【祝島映画情報】
原発反対を貫く祝島の人々と、スウェーデンで持続可能社会を構築する人々を描いた作品『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督)が東京・渋谷ユーロスペースにて上映中。全国各地での自主上映など詳しくは公式サイト(http://888earth.net)で。 ハッシュタグ