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山奥にある絶景秘境駅に行ってみた…駅までの山道にはマムシが出没

―[シリーズ・駅]―
坪尻駅

坪尻駅

 全国には「なぜここに?」と首をかしげたくなるような場所に存在する駅が数多くある。周囲には民家すらなく、列車も1日に数えるほどしか停まらない、まさに秘境。今回は全国でも有数の秘境駅として知られるJR予讃線の坪尻駅(徳島県三好市)を3月に訪問。だが、これがとんでもなく大変だった。

駅に続く山道にはマムシが出没

 この駅があるのは香川県との県境近くの山奥。停車する列車は、上下線合わせて1日わずか7本しかない。線路とほぼ並行するように国道32号線が走っているが、獣道同然の山道を600メートルも登らなければならず、その高低差はなんと90メートル! さらに国道との合流地点から側道に入って少し上った場所に「坪尻駅展望台」があり、谷底にある駅を眺めることができるがさすがに遠い……。  いくら絶景でも片道30分近くも山道を登るのはキツく、どうしようか悩んでいたら2駅隣の阿波池田駅から展望台の近くまでバスで行けることが判明。1日3本しか運行していなかったが展望台最寄りのバス停まで20分もかからないことを知り、バスを利用することに。
展望台は左の坂道を進んだ先

展望台は左の坂道を進んだ先

 朝7時過ぎに出発する始発のバスに乗れば、展望台や駅を見学する時間を入れても坪尻駅8時29分発の琴平駅行きの普通列車に間に合う。下車するバス停を運転手さんに確認すると、なんとこの人も鉄道ファン。これから向かう坪尻駅について、「今は復旧していますが、国道と駅を結ぶ山道が台風の影響でしばらく寸断されていたんです」などの情報を教えてもらった。ただ、その山道はマムシの生息地らしく、「くれぐれも気をつけてください」との忠告も。ヘビは苦手なのに遭遇したらどうしよう……。

展望台からの眺めは最高だが…

2017年に完成した坪尻駅展望台

2017年に完成した坪尻駅展望台

 そんな不安をよそに、下車予定の落(おち)という停留所に到着。そこから脇道を上ると、すぐに斜面にせり出たコンクリート製の坪尻駅展望台が見えてきた。
転落事故があり、注意を呼びかける看板

転落事故があり、注意を呼びかける看板

 ここは以前から撮影スポットとして撮り鉄たちの間では有名だったが、2016年11月に撮影に訪れた男性が足を踏み外して落下する事故が発生。幸い大事には至らなかったが、この事故を受けて地元住民らが展望台を設置してほしいと三好市に要望。それを受けて安全柵を設けた見物・撮影スペースを整備し、2017年5月に完成した。  実は、坪尻駅は急勾配を列車が進むためにスイッチバックと呼ばれるジグザク状の折り返し用線路があり、四国でこの設備が残っているのは同駅を入れて2つ。そんな珍しいスポットということもあって、展望台完成後は一般の観光客も訪れるようになったそうだ。 坪尻駅 山間にある秘境駅だと遠目からでもハッキリとわかり、紅葉の時期であればインスタ映え間違いなし、絶景写真が撮れそうだ。
左の山道を下って駅に向かう

左の山道を下って駅に向かう

 しかし、問題はここから。坪尻駅発の列車に乗るためには、ホームがある谷底まで下りなければいけない。実際、山道はとにかく坂が急だし、小石や岩がゴロゴロしていて歩きにくい。また、折れた木が道をふさいでいる箇所もあった。
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駅舎は開業当時のまま
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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