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高輪ゲートウェイ駅開業の3月14日に廃止された駅がある…現地に行ってみた

―[シリーズ・駅]―
 毎年3月はJRをはじめ、鉄道各社がダイヤ改正を行う時期。本日3月14日、ダイヤ改正に合わせて山手線に46年ぶりとなる新駅、高輪ゲートウェイ駅が開業する。
高輪ゲートウェイ イメージ写真(JR東日本ニュース)

画像:高輪ゲートウェイ イメージ写真(JR東日本ニュース)

 しかしその裏では、同じ日にひっそりと廃止を迎える駅もある。

利用客は1日たったの1.2人

南弟子屈駅

南弟子屈駅

 今回はその廃止となる駅のひとつ、南弟子屈駅(みなみてしかが駅、北海道弟子屈町)を訪問。恐らく、コアな鉄道ファンを除き、ほとんどの人は駅の名前も聞いたことがないだろう。  この駅があるのは、網走駅と東釧路駅を結ぶJR釧網線。北海道の道東を走る166.2キロの路線で、沿線には釧路湿原や摩周湖、阿寒湖、世界自然遺産の知床などの観光名所も多数存在する。だが、2019年の輸送密度(1日の平均通過人員)は380人で、1975年(1817人)から約5分の1に激減(※JR北海道『釧網線 線区の現状について』より)。路線の維持管理に莫大な費用がかかり、2018年度の釧網線の収支状況はおよそ14億円の赤字。100円の運賃収入を得るのになんと603円の費用がかかっているという。
南弟子屈駅

南弟子屈駅

 なかでも南弟子屈駅の2015年~2019年の1日の平均乗車人員は1.2人。もはや地元住民の足にすらなっておらず、廃止もやむなしだろう。  そこで廃止前に南弟子屈駅に行こうと思った筆者だが、鉄道だとアクセスが大変不便なことに気づく。1日の停車本数が上下線各6本と少ないのはローカル線ではよくあることだが、いずれも朝と夕方以降に集中していて昼間に停車する列車が1本もないのだ。  そのため、釧路に前乗りで1泊して、翌朝6時3分発の釧網線の始発列車の網走行きに乗車。1両編成のディーゼルカーは旅行者や鉄道ファンらしき人ばかりで、途中駅で乗車してくる通勤・通学客もほんのわずか。座席にも余裕があった。

改装した貨車が駅舎の代わり?

 列車は早朝の道東の原野を走り、車窓からは国の特別天然記念物のタンチョウ(丹頂鶴)を見ることができた。冬場は『SL冬の湿原号』(※今季は運行終了)、春~初夏にかけては『くしろ湿原ノロッコ号』(※2020年は4月29日~5月10日、31日~6月21日、25日~30日)など観光列車が運行されている路線ということもあり、景色を見ているだけで気分が癒される。
ホームや駅前はきちんと除雪されていた

ホームや駅前はきちんと除雪されていた

昼間に到着する列車が1本もない……

昼間に到着する列車が1本もない……

 南弟子屈駅には7時17分に到着。だが、網走方面の次の列車は15時台まで1本もない! 出発地の釧路に戻る8時45分発という列車があったが、それでも90分近く待つことに。ホームも駅前も除雪されていたが、あるのは貨車を改装した駅舎という名の待合室があるだけ。駅員もいなければ改札口はおろか、トイレすら置いてない。  ちなみに駅が開業したのは1929年。当時は木造の駅舎があり、1953年の岸恵子主演の映画『君の名は』(※2016年公開の同名のアニメ映画とはまったく別の作品)のロケで使用。劇場公開後は今でいう聖地巡礼で訪れる人も多かったそうだ。  この日、南弟子屈駅では筆者のほかに2人の男性客が下車。いずれも鉄道ファンで「3月で廃止になるのを知り、その前に来たかったんです」とは都内から来た21歳の大学生。  もう1人の名古屋から来たという39歳の会社員は、これが二度目の訪問。「20年前に訪れたことがあり、最後にもう一度見たかったので」と再訪の理由を語っていた。
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2020年5月7日には札沼線の16駅も廃止に
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