ウーバーイーツだけじゃない。コロナで台頭するオンライン出前サービス
新型コロナウイルス流行は、何をもたらしたのか? あえてプラス面を取り上げれば、「オンラインサービスが各世代の人々に浸透し始めた」ということだろう。たとえばキャッシュレス決済ひとつ取っても、コロナ騒動が発生する以前は「キャッシュレスは怖い。現金のほうが信用できる」という中高年が少なくなかった。しかし今では、そんなことは言っていられない。
飲食店の出前サービスを外注化する、という仕組みは日本より東南アジア諸国で先に発展した。インドネシアにGo-Jekというオンラインサービスがある。これはバイクタクシーを任意の場所に呼び出すというもので、現地では大いに受け入れられた。しかしよく考えてみたら、バイクの後ろに乗せるのは人でなくとも構わない。
Go-Jekは多機能化の第一歩としてGo-Foodというサービスを立ち上げた。たとえば、飲食店Aのメニューを利用客Bが注文する際、それはGo-Jekのプラットフォームを介して行われる。飲食物を運ぶのは、もちろんGo-Jekと契約するバイクタクシーだ。飲食店Aにとっては、出前のために新たなスタッフを雇用する必要がなくなる。純利益を追及することができるのだ。また、利用客Bは自分の好きなメニューを同一プラットフォームで好きな時に注文できる。
この仕組みは、Uber Eatsのそれと全く一緒。2020年現在では決して物珍しいサービスではない。しかし日本の場合は首都圏在住の市民はともかく、そこから離れた地方都市の市民はどうか。筆者の暮らす静岡県静岡市には、Uber Eatsは進出していない。そのためUber Eatsそのものを知らない人もたくさんいるのが現状だ。これが地域間の情報格差というものである。
が、新型コロナウイルスはそのような人間の都合など気にかけてはくれない。外出自粛に追い込まれた人類は、今まで以上にオンラインサービスに頼らざるを得なくなった。それを使いこなせないと日常生活すら危ういという、誰も予想だにしなかった異常事態である。
先月、神戸市はオンライン出前サービスの出前館と事業連携協定を締結した。これは神戸市が出前館加盟店舗に助成を行うという内容。具体的には、出前館に加盟する際の初期費用の免除、そして加盟店が出前館に払うサービス料の負担だ。配達代行に発生する費用の軽減も考慮されている。これにより、神戸市内の中小飲食店のオンライン出前対応が促進される見込みだ。
この出前館というサービスの名は、頻繁に見かけるようになった。5月1日、出前館はタクシー配車アプリJapanTaxiとの提携を発表した。これ以降、JapanTaxiの抱える業務車両が出前館のデリバリーサービスに対応できるようになった。「タクシーが出前配達を行う」ということだ。もっともこれは、国土交通省が定めた特例許可期間内(5月13日まで)のみのサービスで、対応エリアも東京、神奈川、大阪の一部地域のみ。
しかし、コロナ騒動をきっかけに新しい業態のサービスが誕生したという事実に揺るぎはない。歴史上の出来事には必ずプラス面とマイナス面があるが、「タクシーが有償貨物の運送を兼ねるようになった」というのは一種の進化と考えてもいいのではないか。
この記事の主役である“オンライン出前サービス”も、コロナ騒動の中で注目されている業態だ。外出自粛が続くなかでUber Eatsを利用しているという人も少なくないはずだが、それだけではない。
東南アジアでは日本に先駆けて発展
神戸市と出前館が事業連携
タクシーが出前業務を担う
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