コロナで休学決断の音大生「オンライン講義は実技指導の代わりにならない」
新型コロナウイルスの影響により各大学でオンライン講義が始まる中、授業の質に不安を感じて休学を検討する学生が出てきている。とりわけ充実した練習環境の元で教員から指導を受けることに重きを置いてきた音大生にとって、影響が避けられない事態となっている。
東京芸術大学音楽学部でリコーダーを専攻する3年の深瀬愛実さん(20歳・仮名)は4月下旬、今年1年間の休学を決めた。休学中は自らの音楽観を広げるため、語学を学んだり音楽理論の知識を深めたりするつもりだ。毎日やるべきことを時間割にしてスケジュール管理を徹底すると説明し、両親や指導教員を説得。
両親からは「休学は考えてなかったけど、良い選択かもしれない」と背中を押され、指導教員からは「僕にはできそうにないけど、あなたならできそう」とエールを送られた。
深瀬さんが休学を決めたのは、オンライン講義への不安や大学内の練習施設を使用できる目処が立たないからだ。新学期前には教員と試しにオンラインレッスンをしてみた。お互い不慣れからちぐはぐなやり取りだった。事前に録音した音源を送るように求められ、レッスン当日にコメントを受けた。
リアルタイムで指導を受けるのとは違い、その場で感想をもらえないことに戸惑った。また、録音によって音色が変わってしまったり、音の広がりがなくなってしまったりするのではないかと心配になった。
卒業後は音楽家の道を志す深瀬さんは「(3年生は)音大生としてまとめに入る時期だった」と今年に懸ける思いはひときわ強かった。1、2年生の時は、語学や土台となる音楽理論など座学を中心に履修してきた。個人レッスンは週1回50分ほど、さらに他の学科の学生とアンサンブルの機会が週4時間程度。大学内の練習室を利用して22時近くまで個人練習をすることも少なくなかったが、指導教員から直接レッスンを受けることが上達の鍵だと感じていた。
「今年は留学に向けて語学強化をしつつ、実技メインの履修を考えていました」
新学期を迎えても、新型コロナウイルスの影響でキャンパスへの立ち入りが禁止されたままだ。大型連休明けから始まった前期授業は、当面オンライン講義を余儀なくされる。いつから対面指導が再開できるか見通しが立たないことへの不安から、友人の中にも休学を決めた人もいた。
深瀬さんは「音大は実技が中心で、レッスンも対面指導がメインです。一般の大学と比べ、対面で行う必要性が高い分野です」と訴える。
深瀬さんは「実家住まいの私は休学できたので、恵まれていました。上京して寮に住んでいる学生は実家にも帰れず学校の練習室も使えないけど、お金だけがどんどんかかる。どうしたらいいのかと不安な人は多いと思います」と他の音大生たちに思いめぐらす。
コロナがなければ、なんの迷いもなく3年生に進級していた。それでも悩んだ末に休学を決めた深瀬さんの表情は晴れやかだ。
「この1年間を通じて知識や教養を増やし、いろいろチャンレンジする年にしたいです」
先行きの見えない中で、休学を決断した音大生に話を聞いた。
両親と指導教員を説得、今年1年間の休学を決意
「音大生としてまとめに入る時期だった」と今年に懸ける思い強く
休学の音大生「どうしたらいいのか不安な学生多い」
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新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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