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世界一危険な空港はどこにある? 崖の上に短すぎる滑走路が…

 ここに来て世界各国で新型コロナウイルスの感染者数が鈍化に転じ、外出の禁止・自粛が緩和されてきた。ただし、油断できない状況であることには変わりなく、未だ海外渡航に関しては厳しい制限を設けている国がほとんどだ。  そんな中、自宅で海外の美しい映像を動画で見たり、旅行記などを読んで過ごす“おうち旅”が人気を集めている。そこで今回は、海外50か国以上を訪れた筆者が経験した中でも選りすぐりの旅の道中記を紹介したいと思う。

“世界一危険な空港”から始まるヒマラヤトレッキング

カトマンズ市内

カトマンズ市内

 今から12年前の2008年、筆者はフリーカメラマンの友人と2人でネパールを訪問。仕事ではなく完全なプライベートでの旅行だ。  せっかくなのでヒマラヤトレッキングを計画していたが、当初予定していたのは1~2日のハイキング程度のもの。だが、出発前にネットで「ヒマラヤ山中の村のチベット寺にイエティ(雪男)の頭皮が安置されている」という情報を見つけてしまう。  正直なところ、イエティに対する思い入れはない。だが、若気の至りだったのか「じゃあ、それを見に行こう!」と盛り上がってしまい、なんとなくノリで決めてしまった。今振り返ると、トレッキングを楽しむためのおバカな理由づけに過ぎなかったんだと思う。
テンジン・ヒラリー空港

テンジン・ヒラリー空港

 トレッキングは7日間の日程で、初日は首都カトマンズから飛行機でヒマラヤの谷間にあるルクラ村に移動。標高2800メートルに位置し、エベレスト方面のトレッキングコースの玄関口になっているのだが、空港(テンジン・ヒラリー空港)は約700メートルの落差がある崖の上にあり、滑走路の距離もわずか527メートルしかない。  そのため、離着陸が非常に難しく2000年代以降も事故多発。航空関係者の間では、“世界一危険な空港”にも挙げられている。  一歩間違えれば崖に激突だし、着陸時も勢いがありすぎてオーバーランしそうな恐怖感もあって飛行機には乗り慣れている筆者ですら手汗が止まらなかった。ほかの乗客たちも同じだったらしく、エンジンが停止した直後は機内で大きな拍手が起きたほどだ。

片道だけでも4日間かかる道のり

 今回、筆者と友人のほかに同行者は、日本語の話せるネパール人ガイド、荷物を持ってもらうポーターの総勢4人。目当てのチベット寺があるのはクムジュンという村だが、標高は3800メートルと富士山よりも高い。  ルクラからは車やバスが通れる道路がないので移動手段は徒歩のみ。余裕をもってスケジュールを組んだとはいえ、途中で高度順応をしなければならず、片道だけでも4日もかかる長い道のりだ。  しかも、当時の筆者の体重は115キロ。常に全身に負荷がかかっているような状態で、両膝は早々に悲鳴を上げ、ヒマラヤの神々しい山並みなんて眺めている余裕なんてまったくなかった。  2日目は朝から10時間近く山道を登り、エベレスト方面で最大の村、ナムチェ・バザール(3440メートル)に到着。両足のひどい筋肉痛と高地ゆえに酸素が薄く、村の中を歩くだけでも一苦労。軽いノリでトレッキングに来たことを後悔したのは言うまでもない。
ナムチェ・バザールを離れ、山道を登る筆者

ナムチェ・バザールを離れ、山道を登る筆者

 ナムチェバザールに2泊し、次はいよいよイエティの頭皮が安置されているクムジュン村へ。シャンボチェの丘(3880メートル)と呼ばれる場所を超えるルートだったが、そこに向かう道は丘と呼ばれているのが詐欺かと思うほどの急勾配。
左の頂上が雲に覆われているのがエベレスト

左の頂上が雲に覆われているのがエベレスト

 ただし、丘の上からの景色は抜群で、すでに全身ボロボロの状態だったがエベスレトを眺めることもでき、わざわざここまで来た甲斐があったとしみじみ感じた。
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イエティ拝観料に絶句…ぼったくりかよ
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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