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コロナ増税はあるか? 給付や融資の大盤振る舞いで…

―[コロナ後の未来]―
 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。
コロナ後の未来

大都市では独自に飲食店への“補償”として協力金などを支払う動きも。国の臨時交付金を活用することを政府は容認している

給付や融資で大盤振る舞い、「コロナ復興税」はある?

 新型コロナウイルスは日本経済をどん底へ突き落とそうとしている。社会経済研究所の試算によると、今年のGDPは約85兆円減り、経済成長率もマイナス15.8%になるという。また失業者数も100万人を超えるという予測(ニッセイ基礎研究所)もある。  経済悪化のシナリオに対して、政府は緊急対策をすでに相次いで発表している。賛否はあるものの、総事業規模として108兆円が計上され、すでに給付や融資という形で支援が開始されている。  ただ「そのお金はどこから生まれるのか」という疑問は誰しもが抱くところだろう。東日本大震災後に「復興特別税」が創設され、’37年まで所得税に加算して課税されることになった。今後「コロナ復興税」のような増税はありえるのか。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は言う。 「コロナ対策費は基本的に国債など政府の借金で賄うことになっており、4月末には日銀が国債の購入を無制限にするという追加緩和も決めました。しかし、財務省の均衡財政への執着は誰の目にも明らか。今後、何かしらの形で増税というシナリオはありえます」
須田慎一郎氏

須田慎一郎氏

 国債は国の歳出であり借金だ。それを日銀が無制限で買うとなれば、資金はいくらでも調達できることになる。しかし、歳出と歳入のバランスを取る均衡財政を“絶対正義”とする財務省がそれを容認し続けるとは考え難い。 「現在、欧州など各国でも国債を発行して対策費を賄っていますが、国債の格付けが下がるというリスクがつきまとう。いくつかの国が均衡財政を重視する立場に立ち戻れば、その流れに乗って日本も歳入を増やす、すなわち増税という立場を取るかもしれません」  一方で、戦後最大の国難という建前の下、税制そのものを抜本的に見直そうとする動きもある。 「日本の税制は“増築”や“改築”を繰り返した複雑怪奇なシステム。その様相は“熱海の旅館”と喩えられています。政府内にはコロナ禍をきっかけに徴税システムの解体・再編論も出てきています。消費増税などあからさまな増税では政権が持たない。新たなシステムのなかで“知らぬ間に”増税ということが起こるかもしれません」  確かに、復興税や消費増税など新設・追加しなくても税収を増やすことは可能だ。大手紙の経済部記者は解説する。 「例えば、住宅ローン減税やエコカー減税などさまざまな減税措置がありますし、中小企業に対する減税制度もたくさんある。それらを取りやめれば実質的に税収が増えるでしょう。’23年には小規模法人など免税事業者に不利な『インボイス制度』の導入もあり、それらが重なるようにして、真綿でじわじわ首を絞められるように税負担が増えていくでしょう」  コロナ禍をきっかけに新たな大増税時代に突入するのか!? 【須田慎一郎氏】 ’61年生まれ。経済ジャーナリスト。経済誌記者を経てフリーに。政界や財界での豊富な人脈をもとに数々のスクープを連発。著書に『「階級格差」時代の資産防衛術』など多数 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社>
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