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「コロナ成り金」批判が過熱。アマゾンや楽天がSNSでもやり玉に…

―[コロナ後の未来]―
 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。
コロナ後の未来

アメリカでは「経済活動を再開させろ」とロックダウンに反対するデモが頻発

庶民の反乱が始まった!? 「コロナ成り金」批判が過熱

 コロナショックで今、世界中で高まりつつあるのが富裕層に対する憎悪だ。米シンクタンク・政策研究所は、米国内で失業者が2200万人以上を数えるなか、10億ドル以上の資産を持つ超富裕層らの資産合計が、コロナ以前から2820億ドル増加したと公表。なかでも、今年だけで10億ドル以上を増やしたアマゾンのベゾスCEOや、ビデオ会議バブルで儲かったZoom創業者のユアンCEOらを「パンデミック・プロフィティアーズ(感染拡大で暴利を得た者)」と批判的に名指ししている。  同リポートは『赤旗』でも紹介され、一部で反響を呼んだが、日本でも富裕層嫌悪が広がりつつある。大手紙社会部記者は言う。 「日本では個人というより企業が批判されることが多い。コロナで恩恵を受けているウーバーイーツやEC大手のアマゾン、スマホゲーム会社、消費者庁から根拠なしと指摘されたクレベリンの大幸薬品なんかがそうで、SNSでもやり玉に挙がっている。人物で言えば楽天の三木谷社長でしょうか。コロナで楽天市場が好調な上、PCR検査キットの販売をすると発表したことが『不安扇動ビジネス』などと叩かれていました」  しかし、そもそも危機に乗じて稼ぐことは悪いことなのだろうか。作家の橘玲氏はこう話す。 「今、危機にあるからこそ、稼げる人にどんどん稼いでもらわないと日本という船が沈んでしまう。困窮者への支援の原資も誰かが納税してくれたお金です。さらに、儲けられる会社が雇用創出をして従業員の生活を支えてくれれば、国や行政の負担も減る。それに今、アマゾンや楽天がなかったら我々は生活に困るでしょう」  英語圏のツイッター上では「#MakeTheRichPay(金持ちに払わせろ)」なるハッシュタグがにわかに拡散。富裕層は、その富をコロナショックにより生活に困窮する人々に分配するべきだという主張だ。一方、コロナ禍を受け、国際通貨基金は4月に「高所得層の所得税率や最富裕層の財産税・富裕税の引き上げの検討」などを各国政府に提案している。 「合法的に得た利益を道徳バッシングで奪うことは、ほとんど強盗と同じ。徴税は公平に行うのが大原則で、それを上回る税を課すなら富裕層への感謝も示すべき。納税が懲罰になれば、税を納める人はいなくなります」(橘氏)  金持ちに対する嫉妬ややっかみは、庶民の救済にとっては障害にしかならないのか。 <コロナで儲けた世界の実業家> ▼ジェフ&マッケンジー・ベゾス アマゾン創業者と元妻。ロックダウンで売り上げを伸ばしアマゾン株が上昇。2人の資産は合計で135億ドル増加し、1900億ドルに ▼イーロン・マスク テスラ創業者。自社生産の人工呼吸器を無償提供する一方、政府の意向に反して工場再開を宣言し株価が上昇。50億ドルの資産増に ▼李 西廷 シンガポールいちの大富豪。自身が創業した中国の人工呼吸器メーカーの株価が年初来で4割上昇し、資産を35億ドル増加させた ▼エリック・ユアン テレワークで注目を集めたビデオ会議プラットフォーム「Zoom」の創業者。同社の22%の株を持つ彼は、資産を26億ドル増やした ▼スティーブ・バルマー マイクロソフトCEO。ビル・ゲイツの後継者の彼は今年22億ドルの資産増に。リモート会議アプリのヒットで持ち株が上昇したため 【橘 玲氏】 ’59年生まれ。作家。小説、評論、投資術など幅広い分野で執筆。’02年小説『マネーロンダリング』でデビュー。近著に『上級国民/下級国民』(小学館新書)など <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/Shutterstock>
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