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自粛生活の影響でオークションサイトに大量出品された自衛隊由来品

その92 なぜ、自衛隊由来の品物が多数流出するのか?  さる5月25日に緊急事態宣言が解除されましたが、ここしばらくの間は自宅で過ごす時間が増えたことと思います。自宅滞在時間が長くなって整理整頓・模様替えに目覚めた人もたくさんいたでしょう。そのせいか、今は中古市場に珍しいお宝が溢れています。自衛隊由来の物品もいつもより多く出品されているようです。  この連載では過去に何回か自衛隊由来の教範や装備品のオークション出品問題について取り上げました。しかし、今回は規制強化前のモノのようですが、これまで以上にヤ・バ・イものが出品されていたようです。以下、品目をご紹介します。

自衛隊由来の車両のオークション

 まず、自衛隊のジープ多数。出品されていた自衛隊のパジェロのほとんどは車検切れで「パーツを取るためのもの」という説明がありましたが、なかには車検付きと説明のある車両も存在しました。いくつか具体例を挙げておきます(なお、実際の商品名を簡略化しています)。
パジェロ

即決価格280万円のジープ「三菱 73式 1/2t パジェロ」。「車検:令和2年5月」と書いてある

○自衛隊 ジープ 三菱 73式 1/2t パジェロ  ○自衛隊 73式 V16 パジェロ 1/2tトラック ○パジェロ V16 右フェンダー 陸上自衛隊 73式  自衛隊車両は「防衛専用品」であり、不用になったとしても簡単に廃車したり中古市場に売ったりできない扱いとなっています。「不用決定した物品(供与品を除く)の売払いについて」という通達では「そのまま使用できないか又は復元できないよう破壊、切断等の措置を行う。 この際、保全上必要な部位又は悪用されるおそれのある部位は完全に破壊する」とあります。つまり、「車検付きで再利用できる車両」はあってはならないはずです。  おそらくこれは「過去に自衛隊の廃棄物として一部を切断破壊したスクラップを、別の部品で修理したもの」ではないかと想像しますが、実際の車両が手元にないため検証することはできません。ただ、「自衛隊車両」と説明された車が堂々と出品されている事実に驚くしかありません。  もし、防衛任務遂行中の自衛隊の車列にこの車両が紛れ込んだら……すぐに排除できるのでしょうか? ちょっと怖くないですか?

以前は使われていた銃器・火砲関連出品リスト

 同じく、銃器・火砲関連の装備品も再使用できないように完全破壊して破棄されるはずのものです。こちらも入手経路が気になります。一部リストを挙げておきます。 ○実物 M1A2 グレネードランチャー手榴弾 ○無可動 自衛隊 89 パラストック  ○62式7.62mm機関銃・消炎器 ○教練用 テキ弾筒・ディスプレイ 砲弾薬莢擲弾筒迫撃砲 ○無可動 火炎放射器タンク  このなかに「無可動」という言葉が出てきますが、これは溶接して撃針が動作しないようにするなどの加工により可動できなくしたという意味です。問題は「いつ? どこで?」無可動化したのかということですが、自衛隊由来の実弾や実銃は、基本的に国内で稼働していたものです。つまり、その入手時には可動していた可能性が高いのです。  実銃や実弾を所持する場合は合法的な所持資格を明示して届出をしなくてはなりませんし、自衛隊がそのまま払い下げるなどということはあり得ませんので、「実際に可動していたホンマもん」の所持は違法の可能性が高いということです。  つまり、無可動化された本物がオークションに出回るということは、限りなく黒に近いグレーの入手経路や保管状況が存在するということであり、銃刀法違反を問われる可能性があります。
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自衛隊の秘密保持は大丈夫なのか?
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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