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「大学の先輩にお金を貢いで」借金を背負い、大学を辞めるはめに…

 もしもあの時こうしていれば……。恋愛や結婚、就職、転職、金銭関係など、過去を振り返ってみれば、誰でも後悔のひとつやふたつはあるはずだ。やり直しはきかない。我々は“経験”から学び、今を生きねばならないのである。では、市井の人々が胸に抱える「人生最大の失敗・後悔」とは? そして、その出来事から得た教訓とは? 何かしら参考になる部分もあるかもしれない——。
男性 トラブル

※写真はイメージです。以下同(Photo by Adobe Stock)

「僕の人生最大の失敗は、大学の先輩にお金を貢いでいたことですね」  そう語るのは現在フリーターのK君(20代)だ。これが地獄への入り口だった。K君は多額の借金を背負うことになり、大学も辞めるはめに……。

深刻な面持ちで相談されて…

 大学の先輩であるYと知り合ったのは、スポーツやBBQなどさまざまな活動を行うオールラウンドのサークルだった。そこでK君はYに気に入られ、食事に連れていってもらうことが多くなった。  そんなある日のこと、Yに深刻な面持ちでこう告げられた。 「実はちょっとお金に困っていて……」  彼は大学在学中にIT関係の会社を起こしたのだが、うまく軌道に乗らず、借金ばかりが嵩んでいるという。このままでは学費も払えなくなり、卒業が危ぶまれる。もしそうなれば、すでに決まっていた卒業後の就職もふいになってしまう。  K君はなにか少しでも彼の助けになりたいと思い、こう口にした。 「先輩。僕にできることでしたらなんでもしますから……」  すると、Yはその言葉に目の色を変えて食いついてきた。 「本当か?」 「ええ、僕にできることでしたら」 「じゃあ、いくら稼げる?」 「いくら?」 「おまえ、バイトやってるだろ。それで毎月いくら稼げるんだ?」 「まあ、頑張れば、月36万円くらいは」 「よし、それじゃあ、それを毎月俺に渡せ」 「え?」  Yの提案はこうだった。K君は毎月36万円をYに渡す。そして2人でいっしょに住み、その食費や光熱費などの生活費をすべてYが管理するというのだ。あまりにYに都合のよすぎるバカげた提案である。が、K君はそれを承諾してしまった。  そのとき、K君は親との関係が悪化し、実家を出て友人の家に居候していた。が、そんな浮浪者のような状態からは抜け出して生活を安定させたかった。Yを頼れば、それがすぐに可能になると思ったのである。

Yの不幸な生い立ちにほだされて

 2人はK君のバイト先のコンビニの近くにアパートを借りていっしょに住みはじめた。そしてK君はYに毎月36万円を払い続けた。が、いくら若いとはいえ、学業の傍らにそれだけのお金を稼ぎ続けるのには無理があった。Yに話した。 「やっぱり月36万円は無理です。もうこんなの終わりにさせてください。このアパートも出ますからね」  すると、Yはふうッとため息をつき、悲しげな表情でこう言った。 「そうか。おまえも俺を捨てるのか。まったく、俺の人生こんなことばかりだな」 「どういうことですか」 「俺、今までずっとひとりぼっちだったんだ……」  Yは自分の不幸な生い立ちを話しはじめた。これまで人間関係に恵まれず、ひどい目にばかり遭わされてきたという。親子関係もうまくいっていないという部分はK君とも重なるものがあった。そこでコロッとほだされ、こう思わされてしまった。ああ、やはり彼には僕がついていてあげないとダメなのだ……。  とはいえ、月36万円はやはり無理なものは無理だった。が、それについてYはあっけらかんとこう言う。 「じゃあ、借りればいいじゃん。大学生でバイトもしてれば簡単にお金借りられるよ。俺が申し込んでやるよ」  そしてYはK君の個人情報を聞き出すと、スマホから消費者金融に申し込んで30万円を借り入れた。が、それでもすぐにお金は足りなくなる。K君はさらに学生ローンで30万円、知人から20万円を借り入れ、合計80万円の借金を背負うことになった。  K君は大学の学費も自分で払っていたのだが、それも厳しくなり、退学を余儀なくされた。が、それについてもYはまったく悪びれることなくこう言うのだった。 「俺は別に大学を辞めろなんて言ってないよ。自分で勝手に辞めたんだからな」
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バイト仲間の言葉に目が覚める
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。

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