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高齢ドライバーの事故は減る?「運転免許認知機能検査」の新形態

団塊の世代が高齢ドライバーに

教官の指示を聞く高齢者ドライバー

写真はイメージです

2019年、白昼の交差点で、2人の命を奪い9人の負傷者を出した東池袋自動車暴走死傷事故が起き、世間に衝撃を与えた。その後も、高齢者による交通事故のニュースはいまだに目立っている。しかし、東池袋の事故の以前から、高齢ドライバーによる自動車事故は問題になっていた。 警察庁は高齢者の交通事故を減らす目的で、2017年に75歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に、認知機能検査を導入した。そして2022年5月13日に、「認知機能検査」の内容が変更になった。検査問題が簡素化され、さらに特定の違反行為をした者を対象に「運転技能検査」が導入。技能検査がクリアにならないと「認知機能検査」が受けられなくなった。 いま団塊の世代が75歳を迎えていて、これからさらに高齢ドライバーが増える。現在の高齢者の免許更新の現場がどのような状況なのかを、現在は『速報版 認知機能検査模擬テスト』が発売されている『認知機能検査模擬テスト』シリーズの取材を行った警視庁と都内の自動車教習所の所員に改めて話を聞いた。

認知機能検査は簡素化される!? イラストの問題は変更なし

認知機能検査とは75歳以上の免許更新時に受ける筆記検査のこと。 「認知機能検査は、検査を受けた方が記憶力・判断力が低くなっているかどうかを、簡易に確認するもので、医学的な診断を行うものではありません」(警視庁) これまでの内容は、今現在の年月日や曜日、時刻を答える「時間の見当識」、検査会場で提示される16種類の絵を覚えて回答する「手がかり再生」、紙に時計の絵を描く「時計描画」で構成されていたが、5月13日から「手がかり再生」「時間見当識」だけになった。
認知機能検査模擬テスト

「手がかり再生」(『速報版 認知機能検査模擬テスト』より)

認知機能検査模擬テスト

「時間の見当識」(『速報版 認知機能検査模擬テスト』より)

ただ検査の難易度は非常に低く、この検査で最低分類(記憶力・判断力が低くなっている)と判定された場合、自動車の運転どころか日常生活にも支障が出ているに違いない。実際、検査会場で、どう見ても大丈夫か? と思える老人が受検することもあるそう。 「受検者の中には、回答どころか自分の名前を書くのもおぼつかない方がいらっしゃることもあります。『時計描画』の問題のときに、受検者から『(検査会場に)時計もないのにわかるわけがないじゃないか』とすごまれて、頭を抱えたこともあります」(都内教習所勤務A氏) こういった例はごく一部だが、2017年の認知機能検査の実施状況を見ると、認知機能検査を経て最終的には全体の98.2%の高齢ドライバーが免許の更新を完結できているのだ。 認知機能検査の問題点のひとつとして「高齢者の事故の原因は認知機能の問題だけではなく、身体的能力の衰えも大きくかかわってくる」ということが挙げられる。 もうひとつの大きな問題として「98.2%の高齢者がパスする認知機能検査の実施にあたり大きな手間暇がかかっていた」ということだ。それに加えて、今後、団塊の世代が75歳以上になり「認知機能検査」を受験する人が急増するため、それらの人たちへの対応も大変になってくる。 「認知機能検査は採点にかかるリソースが大きいです。とくに時計描画の問題が大変で、1個の時計の絵を採点するのに『1から12までの数字のみがかかれているか』『数字の順序は正しいか』など、合計7つの採点基準にしたがって細かく見ていかなければなりません。これがもう本当に大変な手間で」(都内自動車教習所所員A氏) 今回の改正では、3分類あった判定結果も2分類に削減するなど、大幅な簡素化を図った。さらに認知機能検査の代わりに医師の診断書も用いることができるようになり、3分類あった判定結果も2分類に削減、検査自体の大幅な簡素化を目指している。
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「運転技能検査」の新設! 受験者も判定者も不安?
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速報版 運転免許認知機能検査模擬テスト

変更された新検査4パターンも収録

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