大学生の彼女が妊娠。彼氏役を演じる藤原季節「人と向き合うときは、ちゃんと傷つくことが大事」
主演を務めた『佐々木、イン、マイマイン』をはじめ、『his』や『くれなずめ』『空白』、大河ドラマ『青天を衝け』など、近年特に活躍が目覚ましい藤原季節さん(29)。現在は、「劇団た組」を主宰する脚本家・演出家の加藤拓也さんが映画初監督を務め、あるカップルの関係を見つめた『わたし達はおとな』が公開中です。
――以前、「作品の登場人物が日常の地続きであって欲しい」とお話しされていました。まさに地続きだと感じられる映画でした。
藤原季節(以下、藤原):非常に曖昧なものを描こうとしている作品だと感じます。付き合う一歩手前の曖昧な関係、そして父親になるとか母親になる、その一歩手前のやりとり。これ、大学生のほんの半年の話なんです(本作は、出会いと現在のふたりの関係を、時間を行き来して見せていく)。それぞれの過渡期の繊細な一瞬を切り取っているのが面白いと思います。
――とても生々しいやりとりなのですが、同時に、ふたりは向き合っているようでいてきちんと向き合っていないように感じます。
藤原:加藤さんのセリフって、書かれていることと本当の意味が違っていたりするんです。たとえば「それ、いいね」というセリフがあったとして、本当にいいねと思って肯定の意味で言っているのか、相手をバカにしたくて言っているのか、もしくは違うことを考えながら言っているのか。裏のテキストが細かく詰まっていて、そこを読み解く作業があります。
――直哉は、観客に嫌われてしまいそうな部分を特に含んでいますね。
藤原:「ありがたいと思っているけど」と前置きしてから話したり。その譲歩も、相手を論破したり、自分を大人に見せるための戦略の言葉でしかない。自分の意見を通すための前置きなんですよね。直哉は、自分が間違っていると追い詰められるとパニックになるタイプでしょうね。
妊娠した大学生の恋人・優実(木竜麻生)から、子どもの父親が自分かどうか分からないと告白される直哉を演じた藤原さんが、「臆病さを乗り越えて、ちゃんと人と向き合う」ことや、「ちゃんと傷つくこと」の大切さを、率直に語りました。
発せられるセリフに隠された意味
自分を大人に見せるための前置き
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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