人はなぜキレることをやめられないのか
もうキレるのはやめにしたい…のに、繰り返しキレてしまうのは何故か
DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。
コミュニティではさまざまな悩みが共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。その1つが
「もうしないと約束したのにまたキレてしまいました。どうしたらキレなくなるんでしょうか」です。
今回はこのよくあるセリフの背景に迫りたいと思います。
「キレてしまう」ことが悩みの人は少なくありません。キレないようにしよう、怒鳴らないようにしようと思っても、決意だけではなかなか人は変われません。それは一体なぜでしょうか?
その答えは簡単です。それは、
人は「キレる」までにいくつものステップを踏んでいて、そのステップが進んでしまうと必然的に「キレる」に辿り着いてしまうからです。「キレる」前のステップをどうにかしないと、「キレる」という現象自体は防げないのです。
これを洪水に当てはめて考えてみるとイメージしやすいかもしれません。雨がどんどん降ってきて水位が高くなっていき、限界を超えると水が氾濫してしまいます。このとき、水位が上がっていくのをただ見ながら「おれは氾濫させないぞ!!!」と願ったところであまり意味はありません。
この雨をイライラと考えてみると、具体的に取り組む必要のあることが見えてきます。
洪水だと考えてみると、どんな変数が重要でしょうか。1つはインプットの量、どれだけ雨が降ってくるかという要素です。もう1つがアウトプットの量、すなわち氾濫する前に流れる量という要素の2つが重要だと考えられます。
つまり「雨が降ってくる量が減れば」洪水が起きづらくなるし、「川の幅が広がって流れる量を増やせれば」洪水が起きなくて済むわけです。これをキレることに当てはめるとどんなことが言えるでしょうか。
雨というものを「イライラ」だと考えた上で、まず後者について述べます。つまり「イライラをキレないで処理していく」という考え方です。具体的にはどういうことでしょうか。
それは一言で言うと
「セルフケア」に他なりません。人によってセルフケアの方法は色々あります。愚痴をこぼしたり、運動をしてみたり、睡眠時間を伸ばしたり、人によって異なるでしょう。
ただしひとつだけ注意があります。それは、
「キレる」に繋がるようなセルフケアは避ける必要があるということです。典型的には「アルコール」や「ギャンブル」(ちなみにスマホや仕事、買い物なども本質的にはこのリスクがあります)などが挙げられます。
僕自身、昔はストレスがかかるたびにいつもお酒を意識がなくなるまで飲んでいました。イライラや悲しみを麻痺させるために、何も感じなくなるためにお酒を飲む。それがパートナーへの暴言へと繋がり、そのイライラがまたお酒に繋がり…という悪循環がありました。
それはセルフケアにはなっていないのです。「酒が唯一の趣味なのにやめられるわけがない」という人もいるかもしれません。実は僕自身がそう言って妻を攻撃していた人間です。
今は飲まなくなりましたがキレることはありません。それは「愚痴をこぼす」「弱音を吐く」「励ましてもらうようお願いする」ことができるようになったからです。
そもそもイライラの正体とは「傷つき」であることがほとんどです。その
傷つきを傷つきのままに人と分かち合うことで、攻撃的になることなく、自分の傷つきとやっていけるのです。新たに自分や大切な人の傷つきを増やさない形で、自分の傷つきを癒す力を持つことでキレることを防ぐことができるということです。
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「
GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:
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