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「障害者手帳の不正利用」で炎上した“レンタル障がい者”当人を直撃、その思惑は

「障害者手帳の不正利用」などの批判で炎上

レン障さんが始めた、障害者手帳での施設利用割引を全面に出した「レンタル障がい者」は、さまざまな批判を呼んだ

レン障さんが始めた、障害者手帳での施設利用割引を全面に出した「レンタル障がい者」は、さまざまな批判を呼んだ

 今年1月上旬、ツイッターに投稿された「レンタル障がい者」というサービスが話題を呼んだ。投稿には「美術館や博物館などの施設で『障がい者を介助したいシーン』でご利用ください。かかった交通費だけもらいます」とあり、ツイート主である21歳の男性(レン障さん)をレンタルすることができる。  また「障がい者手帳を持っているため、施設の利用料は介助者ともに割引されることがあります」とも書かれている。障害者手帳を持っている人の介助者は、同伴すると入場料等が割引・無料になるというのが“売り”となっている。  最初は「いいね」もフォロワーからの1つしかなく、依頼も来なかった。しかし数時間後、インフルエンサーたちがリツイートしたことで、爆発的に拡散。募集した2つの投稿は合わせて、約3800いいね、約7600リツイート、アカウントは数日で約2000万インプレッションを記録した。レン障さんいわく「今まで見たことないくらい」の注目を浴びたのだ。  これに「障害者手帳を不正利用している。制度の悪用では」「手帳の取得や利用に制限がかかるきっかけになりかねない」「制度を作ってくれた国や、協力してくれる施設に対しても失礼だ」などの批判が殺到して炎上した。  このレン障さんとは、どのような人なのか。どうしてこのようなサービスを始めたのか。そして、実際にレンタルした人はどう感じたのだろうか。

「レンタル障がい者」と映画館に行ってみた

レン障さんとハチ公前で待ち合わせた

渋谷駅のハチ公前でレン障さんと待ち合わせた

 まず、取材とは別に彼をレンタルしてみた。  筆者は一人で映画館に行けない。鬱気味でひきこもり、また多動や暗闇が不安だからだ。そこで「一緒に映画を観てほしい」と依頼した。  交通費はペイペイで前払い。映画も予め障害者割引の席を予約した。レン障さんは予定を忘れやすい特性があるので、前日にメッセージを送っておく必要がある。さらに、遅刻など時間管理が苦手な部分もあるのではと思い、出発時にもメッセージした。  互いに遅刻もなく渋谷のハチ公前で集合すると、早速2人で写真を撮ろうとするなど、人懐っこい印象だ。グーグルマップで迷う筆者を見て、レン障さんは「実は道も調べてきた」と言って、道案内してくれた。「なんか依頼やるうちに有能になってきちゃって、ほどほどにポンコツやらなきゃ」と笑うレン障さん。  映画館代は通常なら約2000円だが、障害者手帳を持つレン障さんと、介助者として同行する筆者でそれぞれ1000円。どちらも筆者が払うので、値段的には1人で行くのとほぼ変わらない。  映画では、筆者は観ながら身体を動かし続けてしまっていたが、レン障さんはとくにこちらを気にすることもなく、落ち着いて観ていた。おかげで筆者も「自分も観続けられそうだな」と思うことができ、最後まで席を立たずに見ることができた。  そもそもシステム上、同行して割引や無料になったとしても、東京から離れたレン障さんの交通費を払ったり、一緒にご飯を食べておごったりすると、1人で行くよりも上回ってしまう。  筆者のおごりで一緒にご飯を食べていると、レン障さんは「お金かからないほうが嬉しい。しのびねえから」と言う。
ランチを食べながら話を聞く。話しやすい雰囲気だ

ランチを食べながら話を聞く。話しやすい雰囲気だ

 レン障さんはある時「障害年金をもらっていて、お金ないです」という人にレンタルされて、ライブに行った。その内訳は「俺(レン障さん)の交通費が3000円、ライブ代が一人5000円」と、レン障さんには8000円払っていることになる。その人は当日誕生日だったそうで、彼の恋人も同席。その依頼者は合計3人分の費用を出したのだ。  さらに「彼は、親にも支えてもらっているらしいのに。友達になりたいというので、ラインで繋がって、また今度遊ぶことになった」という。障害を持つ当事者から「友達になりたい」という依頼は、ことの他多いらしい。  確かに、人当たりの良いレン障さんは「友達になりたいな」と思わせるタイプの人間だ。個人的には、筆者の鬱や多動にも気にせず接してくれることもあり、話をしていてとても楽に感じだ。
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双極性障害で手帳2級「ひきこもっていると鬱になる」
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