ライフ

「障害者手帳の不正利用」で炎上した“レンタル障がい者”当人を直撃、その思惑は

当事者が引け目を感じるような福祉はムダじゃないのか

 もっとも、おごってくれるご飯については「僕の腹具合と、相手の財布具合。『おごってほしいな』ととりあえず言うけど、『やだ』っていわれたら『OK』です」と、ご飯をおごることは必ずしもレンタルの条件ではないという。  レン障さんに対する他の批判的意見としては、「友だちが欲しいなら、障害者手帳を使わずに『遊びませんか』と呼びかければよい」というものもあった。    レン障さんは「そんなつまんないやり方で、友達なんか増えるわけがない。それにこちらからダイレクトメッセージをして『遊ぼう』だなんで、そんなナンパみたいなことはできない。待ちの姿勢で、いかに人を集められるか」と言う。  さらに「障害者のイメージが悪くなる」という声には、レン障さんは「当事者が引け目を感じるような福祉ってムダじゃないのかな」と、逆に疑問を呈した。 

乙武さん「『レンタル障がい者』は、健常者と障害者が出会うきっかけになる」

乙武さんにレンタルされ、YouTubeで対談したレン障さん

乙武さんにレンタルされ、YouTubeで対談したレン障さん

「障害者手帳での割引」を提示した友達募集の仕方は、本当に「本来の趣旨」に反しているのだろうか。  レン障さんは1月下旬、作家の乙武洋匡さんにレンタルされて対談を行った。対談の様子は1月28日に公開されたYouTubeチャンネルで見ることができる。乙武さんは先天性四肢欠損で、1種1級の障害等級を持つ。  乙武さんは「レンタル障がい者」を「社会的にすごく意義のある動き」と評価し、健常者と障害者が出会うきっかけの一つになりうると指摘した。 「僕らからしたら、いろんな人に介助してもらって生活を成り立たせたいと思うけど、健常者側からしたら、そんなことするメリットってあんまりない。そんな時『僕と行くと割引になるんで(一緒に)どうですか』というインセンティブが働くのは、僕はむしろ大事かなと思うんですよね」(乙武さん)  また、健常者と障害者との分断について語り、「小さいころから支援学校・学級で育った子どもは、健常者の友達を作る機会がない。だから友人に介助してもらってくださいって言われても、友人も同じ障害者ばかり。医療関係者といっても、身体障害の世界でも、普段から医療関係者と行動をともにしている人ってあまりいない」と、そもそも介助者が足りていない現状も指摘した。  ネットも批判ばかりでなく、「レンタル障がい者」を支持する声もある。ツイッターには「すごい発想。応援したい」「金銭目的じゃなくて本当に友達が欲しいだけだと思う。相手もお得に行けそうで、賢いやり方だとは思う」また「自分も一級の手帳持ちだが、今現在、健常者の友だちはいない。レンタル障がい者をやってみたい」さらには「割引のきく施設で働いているが、どんな形でも来てくれるのはうれしい」という声もあった。    レン障さんは「健常者とどっかいくより、引きこもっている障害者の助けになりたい」と言う。依頼ではないが、レン障さんの活動ぶりを見て「自分も障害があってひきこもりだが、展覧会や博物館に行ってみたいと思えるようになった」というメッセージも来たという。  現在の障害者福祉の制度は、当事者が友だちを作ろうとする時、外へ出て世界を広げたいと思う時、寄り添ってくれるものだろうか。さまざまな物議をかもした「レンタル障がい者」だが、制度を「こんなふうに使えたらいい」と思う、当事者たちのニーズをくみ上げたことは間違いないようだ。 文・写真/遠藤一
1
2
3
4
おすすめ記事