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ペットを“買う”のは悪いこと?犬猫のために個人ができることとは<太田快作氏×まんきつ氏対談>

 相次ぐ「殺処分ゼロ達成」の発表は喜ばしい。けれどその道程は決して楽ではなかったはずだ。そしてゼロを維持するとなると事はさらに深刻だろう。時代は変わったのか。それともまだまだこれからなのか。  SNSを使った呼びかけや避妊去勢手術の義務づけの是非など、殺処分ゼロを達成するために飼い主が心得ておきたい最新の知見とは。保護犬を家族として迎え入れた経験を持つ太田快作医師と漫画家のまんきつ氏が語り合った。

犬猫のために個人は何ができるのか?

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ

漫画家のまんきつ氏(左)とハナ動物病院院長の太田医師(右)

まんきつ:私が愛犬たちを漫画に描こうと思ったのは、ペットショップで売れ残った犬猫や繁殖引退犬が業者に引き取られ、病気になっても放置されたまま狭いケージに閉じ込められているニュースを見たことがきっかけでした。犬猫の悲惨な現実を解消するため、私たちはどんな行動をすべきですか? 太田:正直、一般人が個人で何かをするのはかなり難しい。たとえば劣悪な飼育環境での虐待を見つけたとき、警察や役所に駆け込んでも応じてもらえないことが多い。だからといって動物たちは自分で何もできませんから、見捨てるわけにはいかない。  獣医師でも身近な友人でも、愛護団体でもいいので相談して、誰かが動いてくれるまで諦めないでほしい。必ずしもアリとは言えませんが、SNSで声を上げるのもひとつの手段。殺処分問題や保護活動がこれほど世間に広まったのは、SNSの影響も大きいと感じます。 まんきつ:その反動なのか、犬を“買う”ことを悪く思う人も増えたようで、ペットショップで犬を買ったと公に言うとSNSで炎上するそうです。 太田:ペット産業の裏側には問題点もありますが、飼い主と愛犬の出会い方を否定するのは違う。幸せにしてあげられるのなら、衝動買いだって構わないと思います。人もペットも相性が大事なのは同じ。  これから犬を飼いたい人は、迷ったら、保護施設とペットショップの両方へ足を運ぶといいでしょう。他人の目を気にするより、ピンときた子を一生大事にするのが最善です。

殺処分件数の少なさはボランティアさんたちのおかげ

犬の[殺処分ゼロ]現場ルポのまんきつさん

「愛犬と一緒にいて本当に幸せにしてもらっているのは私のほうだった」と話すまんきつ氏

まんきつ:私は愛犬のポテトを引き取ったご縁で保護活動をしているボランティアさんのお宅にも伺ったのですが、「私は納豆さえ食べられればいいの」と質素な暮らしをされていて頭が下がりました。 太田:動物愛護に関する法律や行政の仕組みは欧米と比べて圧倒的に遅れている日本ですが、数字だけを見ると、人口に対する犬猫の殺処分件数はアメリカの100分の1以下です。これはボランティアさんたちの努力があってこそ。  最近は動物愛護に力を入れる自治体も増えてきましたが、現場のトップが代わった途端、著しく悪化するケースも珍しくない。  世界的に見ても日本のボランティアが優れていることは間違いないので、彼らのノウハウを行政が学び、誰がトップになっても変わらないシステムをつくることが健全な在り方だと考えています。 まんきつ:そうなれば、命懸けで活動をしているボランティアさんの負担も軽減できるかも。
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