更新日:2023年07月16日 17:40
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回らない「魚べい」が好調。いち早く“回転レーンを廃止した”先見の明

化学メーカーで研究開発を行う傍ら、経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。 『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は元気寿司株式会社の業績について紹介したいと思います。 元気寿司と聞いてもピンと来ない方は多いかと思いますが、国内では「魚べい」、海外では「GENKI SUSHI」を展開しており、2022年度の売上高は546億円と実は業界5位の規模をほこります。最近、回転ずし業界は「スシローペロペロ事件」を機に回転レーンの廃止を進めていますが、元気寿司は以前から廃止を進め差別化に成功してきました。そんな元気寿司の沿革と業績推移について解説したいと思います。
魚べい

画像はイメージです

業界でいちはやく海外展開を進めた

元気寿司はもともと「元禄寿司」のフランチャイジーとして宇都宮市に創業しました。大阪地盤である元禄寿司の名前を借りて栃木を中心に店舗数を増やしていきました。 その後、1990年に新商標「元気寿司」としての営業を開始し、翌年には日本証券業協会に株式の店頭登録を行います。1993年から95年の間にハワイ、シンガポール、香港、マレーシアに1号店を開店するなど業界でいちはやく海外展開を進めました。1997年に東証2部上場を果たし、2002年には1部上場となります。 しかし、90年代に進出した海外事業は軌道に乗らなかったようで、本格的に海外展開を進めるのは2000年代になってからです。国内では直営店のみを展開していましたが、2000年以降海外では現地企業とのフランチャイズ契約を進め、中国や東南アジアにFC店を増やしていきました

海外店舗の数が国内店舗を上回る

2012年にはコメ卸売業界大手・神明(現:神明ホールディングス)と資本業務提携を実施し、15年には同HDの子会社となりました。神明HDのもと「かっぱ寿司」や「スシロー」との業務提携も行いましたが、方針の違いから後に解消しています。 2023/3期末時点で国内では直営のみの183店舗を展開し、ほとんどが「魚べい」です。魚べいでは回転レーンを設けておらず、タッチパネルで注文した寿司が2、3段の高速レーンで運ばれるシステムをとっています。 海外では主にFC形態の「元気寿司」を展開しており、店舗数は231と国内を上回ります。地域別では香港88店舗、中国55店舗、インドネシア32店舗とアジアがメインで、海外店舗数では業界屈指です。
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レーンの削減にはコスト削減の側面も
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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