「人間よりもロボットのほうが“人の心”を描きやすい」『空気人形』『自虐の詩』のマンガ家が語る画業40周年
2009年、ペ・ドゥナ主演で話題を集めた是枝裕和監督の映画『空気人形』の原作者であり、「泣ける4コマ」として評判を呼び、2007年に映画化された『自虐の詩』などの作品で知られるマンガ家・業田良家。
――40周年を記念した原画展というだけあって、さまざまな年代の作品の原画を見ることができるので、ファンにとってはたまらない催しになっています。もともと、この原画展はどういった経緯で開催されるに至ったのでしょうか?
業田良家(以下、業田):ヴァニラ画廊さんからお話をいただいたのですが、当初はとても迷いました。というのも、これまではマンガを描くために時間を割いたほうがいいと思って、個展を開いた経験がなかったので、原画展がどういうものなのかまったく予想できなかったんです。しかし、同画廊のキュレーターからいただいた愛情のこもった企画書を読んでいくうちに、僕の作品、特に『ゴーダ哲学堂』シリーズを高く評価されていることをうれしく思うようになって、原画展を開く運びになりました。
――本原画展では、描き下ろしの「絵言葉」 も展示・販売されています。久々に描くキャラクターも多かったのではないでしょうか?
業田:なるべく昔のタッチで描こうと思いましたが、完全にその通りにはならなかったですね。やっぱり、どうしても今の手癖が出てしまう。それでも、なるべく昔の画風に寄せようとはしましたよ。
――なにせ、40年やっているわけですからね……。ただ、この原画展で初めて知ったのですが、コロナ禍の前後から、モノクロページはデジタルに移行されたそうですね。
業田:画面を拡大縮小できるので、老眼の自分にはデジタルでの作画は助かっています。また、ベタやスクリーントーン、修正がとても楽になりました。修正に関しては直筆の場合、ホワイトだとガサガサになってしまうので……。
ただ、ペン入れは逆に時間がかかっている感じがします。直筆であると、ペンを一度入れてしまうと諦めがつきますが、デジタルでは修正が簡単にできますから、どうしても綺麗な線を引こうと思って諦めがつかなくて、何回も線を引き直してしまいます。初めは「デジタルで味は出るのかな?」と思っていましたが、少しずつ試して描いていくうちに、今では「デジタルもありだな」と思うようになりました。
彼の画業40周年を記念した原画展「マンガ仕掛けの愛」が、11月23日〜12月17日まで東京・ヴァニラ画廊で開催されている。本原画展は、彼のデビュー作から、現在も連載中の作品までが網羅されており、「マンガ家・業田良家」のすべてが詰まった空間となっている。
40年という長きにわたるマンガ人生の中で、彼はいかにして自身の哲学を作品に落とし込んできたのだろうか?
「当初はとても迷いました」
コロナ禍でデジタル作画に移行
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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【イベント情報】
原画展「マンガ仕掛けの愛」は12月17日まで東京・ヴァニラ画廊で開催
営業時間:平日12時~19時、土日祝12時~17時
〒104-0061 東京都中央区銀座八丁目10番7号 東成ビル地下2F
原画展「マンガ仕掛けの愛」は12月17日まで東京・ヴァニラ画廊で開催
営業時間:平日12時~19時、土日祝12時~17時
〒104-0061 東京都中央区銀座八丁目10番7号 東成ビル地下2F
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