「煙草は一日1.5箱」生活保護を受給する58歳男性漫画家が「後悔はない」と語る理由
なりたい夢があっても食っていけるかわからない。そんな狭間で多くの人が道に迷う。カルト的人気を誇る漫画『国民クイズ(作画)』や『バカとゴッホ』などの作品で知られる漫画家・加藤伸吉さん(58歳)は、今年から生活保護を受給して生活している。それでも漫画という道を選んだことに後悔はないと語る、その理由とは――。
「部屋、本当に汚いよ。シャレにならないくらい。いいの?」
連絡がつながらず、自宅にダメ元で伺うと、突然の訪問に戸惑いながらも部屋へ通してくれた。加藤さんは、都内の下町にある生家で、一人でひっそり暮らしている。
「1年前にね、この家に戻ってきたんだ。居候していた仕事仲間のところを追い出されたから、行く当てもないから仕方なく。『家に帰ったら負けだ!』と思って出ていったのが30年前。いろんな記憶が蘇ってきて嫌だね。ここでね、おとんとおかんと妹と、4人で暮らしていたわけよ」
3LDKの自宅は、ゴミや壊れた家具家電が散乱し、生活スペースは半分以下になっていた。酒のせいで家具家電に八つ当たりし、朝にごみを出すのも億劫になってしまったのが原因だという。
リビングのダイニングテーブルの上には、母親の遺骨が置いてあった。
「母ちゃんが3年前の2021年に死んで、父ちゃんはその前に死んだ。いつだったかな。居間の真ん中でミイラ状態で出てきて、孤独死だね。異臭がするから近所の人が通報して、警察から連絡がきて発覚した。飯食わないで自殺同然だったと思う。部屋に遺体のシミがあったから、自分でホームセンターで材料を買って床板を交換したんだよ」
ちぎれた写真の欠片を見せて、こう続ける。
「これが父ちゃんね。写真はムカついて破っちゃった。確執あったから。母ちゃんを殴る暴力オヤジ。年取っても夫婦二人で住んでたけど、母ちゃんがあるとき、暴力に耐えられなくて逃げ出したんだ。だけどさ、確執があったとはいえ、ここにいると家族が仲良かったときを思い出してしまうよね。
母ちゃんはそこの台所で料理してて、父ちゃんが帰ってくると、妹と一緒にプロレスごっこしたりして。いつだったか、テーブルで父ちゃんとスーパーで買った寿司を二人で食ったんだよね。それが、ここで家族で過ごした最後の思い出。戻ってきた当初は、そういう情景が亡霊がいるかのように浮かんできてしんどかった。最近、やっと落ち着いてきたわ」
生活スペースは「半分以下」に
父ちゃんはここで孤独死した
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