更新日:2023年12月06日 14:44
エンタメ

「人間よりもロボットのほうが“人の心”を描きやすい」『空気人形』『自虐の詩』のマンガ家が語る画業40周年

カラーページはアナログにこだわり

――それでも、カラーページは今も、アナログで描かれているんですよね。 業田:デジタルでは思うように色が出せず、人工的になりすぎてしまい絵に味が出なくなってしまうので、今でもカラーページだけは直筆で着色しています。 ――なるほど。普段は液タブ(液晶タブレット)で描かれているんですか? 業田:いえ、iPadで「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」というアプリを使っています。だから、操作も簡単なんですよね。それに、分からないことがあったら、アシスタントに教わるか、インターネットで調べています。YouTubeの解説動画を見れば、すぐに使いこなせるようになりますよ。

空気人形は「わけがわからない」と言われた

業田良家

代表作の「空気人形」

――個人的な話なのですが、私の実家に小林よしのり氏が責任編集長を務めた雑誌「わしズム」があったこと、祖母が床屋を営んでいたので「ビッグコミック」をまとめて読むことができたため、常に業田先生の作品が自分の側にありました。そして上京後、サブカルチャーに傾倒したときも『空気人形』はもちろん見たのですが、まさか「わしズム」で『独裁君』を描いていた作者が原作者だったとは思ってもいませんでした。 業田:それは意外だったでしょうね。 ――しかも、原作は20ページ程度の短編作品だったんですね。空気人形というか、「性欲処理のためのラブドール」が恋をするという発想はどこから生まれたのでしょうか? 業田:CHARAというアーティストの「びしょぬれの」という曲に「女達は空気の抜けた風船に 息吹きかける やさしく」 いう歌詞があってね。そこから、イメージを少しもらいました。 ――本作を発表した当時の反響はどうだったんですか? 業田:当初、気心の知れた編集者にネームを見せたら、「わけがわからない」と言われました。でも、『ビッグコミックオリジナル』の担当編集に見せたところ、「すごくいい」と言われて描いた記憶があります。人によって反応が全然ちがいました。
次のページ
「空気人形」の是枝監督にした“お願い”
1
2
3
4
5
編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
記事一覧へ
【イベント情報】
原画展「マンガ仕掛けの愛」は12月17日まで東京・ヴァニラ画廊で開催
営業時間:平日12時~19時、土日祝12時~17時
〒104-0061 東京都中央区銀座八丁目10番7号 東成ビル地下2F
おすすめ記事