更新日:2024年05月08日 15:32
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2009年に閉園した遊園地の今。「侵入者を防ぐ高い塀」がもたらした“皮肉な現象”――大反響トップ10

反響の大きかった2023年の記事を厳選、ジャンル別にトップ10を発表してきた。今回は該当ジャンルがなかったが実は大人気だった記事を紹介する!(集計期間は2023年1月~10月まで。初公開2023年8月22日 記事は取材時の状況)  *  *  * 全国に数多くあるテーマパーク。今もなお新しいテーマパークが生まれては人々を楽しませ続けている。しかし、そんなテーマパークには、あまり語られることのない側面が存在する。そんな、「テーマパークのB面」をここでは語っていこう。 東京西部の多摩地区。小高い丘が並ぶ丘陵地に、かつて「多摩テック」という名の遊園地があった。1961年に開園したこの施設は、モータースポーツをテーマとした遊園地、という意味でテーマパークの先がけともいえる施設だった。
多摩テック

多摩テック跡地裏から多摩丘陵を望む。自然豊かな姿がよくわかる

2009年に閉園した多摩テックの今

ホンダの子会社が運営を行っていて、お家芸ともいえるモーターバイクや自動車をモチーフとしたアトラクションが数多くあったことで知られている。「テック」という名前から想像がつく通り、最先端テクノロジーを総動員させて、来場者を楽しませる場所だった。 しかし、その場所は残念なことに2009年に閉園してしまい、以後、その土地の活用方法をめぐってさまざまな議論が巻き起こった。その詳細には立ち入らないが、廃テーマパークの跡地をどのように処理するのかは、テーマパークの問題を考えるにあたって常に重要なテーマである。

侵入者を遮る「高い緑色の塀」

多摩テック

このような塀がずっと続く

その跡地はどうなっているのか、見に行ったことがある。車を走らせてこの丘陵地に行くと、多摩テックがあったところだけこんもりと山のようになっている。その山に沿うようにして高い緑色の塀がずっと立てられていて、この奥がかつての多摩テックだったのだろう、と想像させる。 往時を偲べそうなところはないか、その塀の周りをずっと回ってみる。塀はかなり厳重に立てられていて、どこからも中は見えないし、塀のそこかしこに「常時警戒中」という張り紙がしてある。 いっとき、廃墟ブームみたいなことが起こったことがあって、特にバブル期に建てられては閉園したテーマパークは、廃墟マニアたちにとって格好の探索場所になった。そんな世相を反映してだろうか、この塀の有り様である。なんとしても侵入者を中には入れない、そんな意志を感じる。
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茂みの中からタヌキが出現
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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