耳元にライターを近づけて「殺すぞ」…50代支店長の日常的なパワハラ。“民間の相談窓口”に集まる悲痛な声とは
ハラスメントに対する認識が高まっている。きっかけは厚生労働省が全ての企業に対して、ハラスメント相談窓口の設置を義務づけたことだ。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日からの設置が求められている。
代行の仕組みは、契約している企業の社員(通報者)から電話で相談を受ける。心理カウンセラーの資格を持つ相談員は相談内容を整理して、企業のコンプライアンス担当者に報告をする。報告を受けた担当者が事実確認の調査を行い、調査が完了すると日本公益通報サービスに結果報告をする。それを通報者に伝えるという流れだ。
通報者が直接企業のコンプライアンス担当者とやり取りをすることがないため、通報しやすいというメリットがある。
相談窓口には月に14~15件のパワハラ・モラハラ・セクハラ・いじめなどの相談が寄せられている。場合によっては弁護士にフィードバックすることもあるという。働く世代にとって関心が高いハラスメント問題の主な事例を挙げてもらった(以下、同社への取材をもとに構成)。
2023年7月のことだった。ある不動産会社の30代事務職の女性から「私は直接被害を受けていませんが、同じ部署内で起こっているパワハラに耐え切れません」という通報があった。従業員300人ほどの規模の企業で、50代の支店長代理のパワハラは副部長や課長など役職を含めてほとんどの営業スタッフの及ぶという。
「特に20代の若い男性社員に対してエスカレートしています。大声で怒鳴ったり、机を蹴ったり、下ネタを言って反応を楽しんだり、ヒドい場合は『殺すぞ』と脅すんです」
特に耐えられないのは、若い男性社員の耳元にライターを近づけて脅し、相手の反応を面白がっているのだという。
不動産会社のコンプライアンス部が早速、調査に乗り出すと、実際にパワハラが行われていたと判明した。そこで企業側は加害者である支店長代理を指導したが、改善されず、2度目の通報があった。加害者はヒラ社員に降格されて本社に異動となり、常に監視されるようなポジションにいるのだという。
だが実際はハラスメントが生じても声を上げにくい環境が企業にある。そこで、神奈川県の民間企業・日本公益通報サービスは、ハラスメント(パワハラ・セクハラ)の相談窓口、循環取引などの内部通報窓口を代行する外部相談窓口サービスを2023年3月から開始した。
月15件のパワハラ・セクハラ相談が
事例1:50代支店長代理の日常的なパワハラ
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