精神科病院のソーシャルワーカーを直撃
ソーシャルワーカーの奥井さん(仮名44歳)
精神障害者や精神科病院は怖い。そういう思いを抱える人も多いのではないか。精神科病院のソーシャルワーカーとして働いて、4年目の奥井さん(仮名・44歳)に話を聞いた。
奥井さんは奈良県で生まれ育った。高校卒業後、難病のお父さんの介護のために、旧ヘルパー2級の資格を取った。資格を取った奥井さんは、実務経験を身に着けるために、高齢者向けデイサービス事業所に勤務するかたわら、休みの日は訪問介護のヘルパーとして働くハードワーカーだった。
「かけもちしたのは、利用者さんの家での様子、通所先での様子のどちらも知りたかったからです。在宅のとき、デイサービスに通っているときでは、別の顔がありました」
お父さんの介護は、結局、最期に関われただけだった。だが、奥井さんはオールマイティーに対応できる介護職を目指し、仕事にまい進した。
介護付き有料老人ホームでの3年の実務経験を経て、介護福祉士の資格を取り、ヘルパー事業所の責任者となった。その後、働きながら、福祉系大学に通い、社会福祉士と精神保健福祉士(PSW)の資格も取る。
そんな奥井さんに転機が訪れたのは、40歳の時だった。
「居宅介護支援事業所でケアマネジャーをしていた時に、精神疾患の症状が出て、面倒を見切れなくなった父親を、精神科病院に医療保護入院させた家族がいました。精神科病院では、急性期には、保護室に入ります。その姿を見て、家族が後悔していたんです。買い物に行くと言って、病院に連れて行ったのは私でした」
その件がきっかけで、精神科病院はどんな場所なのか興味がわき、老人介護の世界から、精神医療の世界へと転身する。
精神科病院への入院形態は5種類
奥井さんが入職したのは、たまたま、関東某市にある、地域でも「最後の砦」といわれる精神科病院だった。定員100人以下の小規模病院だったという。ソーシャルワーカーとして、半分は行政から、3分の1は地域のケアマネジャーから、残りが家族から、精神疾患や障害者の入院相談に乗ることとなる。
①任意入院:患者の同意がある、いわゆる普通の入院。
②措置入院:精神保健指定医2人以上の診察が必要で、自傷・他害の恐れがある場合に適用される。3番目の緊急措置入院もだが、入院の必要性を決める権限は都道府県知事にある。
③緊急措置入院:緊急の場合なので、精神保健指定医1人の診察で可能。その代わり、自傷・他害の恐れが著しく高い場合に限られる。入院期間は72時間(3日間)以内で、権限は都道府県知事にある。
④医療保護入院:精神保健指定医1人による診察が必要。そして、家族のうち、いずれかの者が同意している必要がある。
⑤応急入院:家族等の同意が得られない場合に適用される。家族にも本人にも、同意を得られないという段階で、ある程度、どういう状況なのか想像ができる。
(厚生労働省
医療保護入院制度について より引用)
精神科入院経路も上記のように様々なものがある。それぞれ、このプロセスを経て、入院に至る。
「私が働いていた精神科病院では、任意入院はほとんどいませんでした。年齢層は、10代~80代までと幅広かったのですが、医療保護入院がほとんどでした。入院患者は、重度の統合失調症の方が7割。他の3割は、双極性障害・自閉症・知的障害の人たちでした」
立教大学卒経済学部経営学科卒。「
あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):
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