更新日:2024年09月28日 09:09
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袴田ひで子さん「“被告人は無罪”が神々しく聞こえました」。袴田事件裁判で現場は“お祭り状態”に

 日本の法制史を揺るがす“世紀の裁判”は、人口約70万人の都市、静岡市で開かれていた。  その裁判とは、1966年6月に静岡県清水市(現:静岡市清水区)で発生した、味噌製造会社の専務一家4人が殺害されて現金が奪われた上に、一家宅が放火されたという強盗殺人・放火事件。犯人とされたのは、袴田巖さん(88)。俗に言う「袴田事件」だ。  袴田さんに対しては、1980年に最高裁で「死刑判決」が確定。その後、2回の再審請求を経て、2014年3月に静岡地裁が再審開始と拘置の執行停止を決定し、袴田さんは48年ぶりに釈放されている。  9月26日、再審やり直しの裁判の判決が静岡地裁(國井恒志裁判長)で開かれた。裁判所前は午後の開廷を前に、朝から“お祭り騒ぎ”。本記事ではその様子をレポートする。

厚く重い“再審の扉”を開いた「袴田事件」

裁判所

静岡地方裁判所/筆者撮影

 事件は、さかのぼること58年前の1966年6月30日のこと。深夜2時すぎに、静岡県清水市(現:静岡市清水区)の味噌製造会社の専務の自宅が全焼する火災が発生。焼け跡からは、専務(41)のほか、妻(39)、次女(17)、長男(14)の4人が刃物でめった刺しにされた遺体が発見された。さらに、事件日が味噌製造会社の給料支給日であったことから、現場となった専務宅には大金が置かれており、その一部が盗まれていた。  警察は当初から、従業員で元プロボクサーの袴田さんを犯人であると決めつけた上で捜査を展開し、同年8月18日に袴田さんを逮捕。袴田さんは、当初は否認していたが、警察での1日平均12時間以上の取り調べ・自白強要により、逮捕から19日後の9月6日に自白。静岡地検に強盗殺人と放火の罪で起訴された。  警察では猛暑の中、取調室に監禁され、便器を取調室に持ち込んでトイレにも行かせない状態で、自白に追い込んでいたという。 「お前は殺人犯だな。その罪は深いぞ、深い。自分が犯した殺人という罪。これに対して、本当に心から謝る、本当の心から謝罪するんだ」(取り調べ録音テープから)  その後、1966年11月から静岡地裁で開かれた裁判では、自白から一転して全面的に起訴内容を否認。1968年9月、同裁判所(石見勝四裁判長)は袴田さんに対して、死刑判決を言い渡した。その後も、無罪を訴えて控訴・上告するも死刑判決が確定。  もっとも、「袴田事件が冤罪ではないか」という疑問を強めた出来事が、第一審が審理されている最中に発生した。当初、犯行着衣とされていたパジャマが、公判の中で警察が行った鑑定に疑惑が生じ、実際に血痕が付着していたかも疑わしいことが明らかとなり、検察側が不利になりつつあった。  そんな中、事件から1年2か月も経過した後に、なぜか工場の味噌タンクの中から新たな犯行着衣とされる「5点の衣類」が発見され、検察側はあっさりと犯行着衣を変更。のちに「5点の衣類」に付着していた血痕の色などから捜査機関の捏造の可能性が高いとして、2014年の再審開始の決定打ともなり、厚く重い「再審の扉」を開くことになった。

傍聴の倍率は12.6倍に!

 裁判当日の9月26日。この日の静岡市の天候は、薄曇り。気象庁によると、今年の夏は1898年に統計を取り始めてから最も暑い夏というだけに、9月下旬にもかかわらず汗ばんでしまう。
裁判所

裁判所前に集まった人たち

 午前9時過ぎ、筆者が到着した時点で、既に裁判所前は“お祭り騒ぎ”と化していた。上空にも傍聴希望者の行列を空撮しようとヘリが何機も飛んでいる。  この裁判では、事前に多数の傍聴希望者が予想されていたことから、抽選式の「傍聴券」が交付されることに。裁判の開廷は午後2時だが、裁判所側は多数の傍聴希望者で列ができることを予想し、著名人の裁判と同様に、午前中に傍聴券を交付する形となった。
裁判所

裁判所内で傍聴券に並ぶ人たち

 午前9時20分ころ、予定開始時刻よりも前倒しで、整理券の交付が開始された。この整理券の番号をもとに、抽選して傍聴券が交付される。全国各地から“世紀の瞬間”を目撃しようと集まった人で、整理券交付の締切の午前10時まで列が途切れることがなかった。  この日の一般傍聴席の数は40席。それでも、これまでの全15回の審理で使用された202号法廷よりも一回り大きな法廷が使用されている。裁判所によると、最終的に希望者数は502名、倍率はなんと12.6倍となった。
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袴田さんが“無実の人”へと変わる瞬間
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2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
X(旧ツイッター):@Gakuse_Bocho

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