「なんか歯が伸びた?」と思ったら要注意。歯が抜ける病気“歯周病”の恐怖
現在、高血圧や糖尿病など生活習慣病に罹る人がとても増えています。歯科の分野でも、食生活や生活習慣が影響するむし歯や歯周病、生活習慣病と言えるものです。特に歯周病は30代の3人に2人、その罹患率の高さから国民病とされています。全身の様々な病気との関連が報告されているため、放置している状態はあまり良いとは言えません。
30代未満は歯周病に罹らないというわけではありません。歯周病には“歯肉炎”と呼ばれる歯茎のみに炎症が生じている状態と、骨や歯を支える周囲の組織全体に炎症が生じている“歯周炎”の状態。この2つに大きく分けられます。
年齢が若い人で生じている割合が高いのが“歯肉炎”です。年齢が若くても歯の磨き残しが常にあるしている状態では、歯石が形成され歯茎の炎症が生じてしまいます。当院にいらっしゃった16歳の患者さんの例を紹介します。歯石がこびりつき、歯茎は赤く腫れていました。
明確に歯肉炎がわかる場合もあれば、自分では判断できないレベルの軽度の歯肉炎の患者さんもいらっしゃいます。
若い年齢から歯茎の炎症を見過ごしたままにしておくと、年齢を重ねるごとに歯周炎を引き起こすリスクが非常に高いです。若い世代でも定期的な検診や歯石の除去をすることが歯周病予防のために重要です。
歯周病が原因で来院する患者さんの主訴で最も多く聞かれるのは「噛むと痛い」です。
歯周病は歯の周囲に炎症が生じている状態なので、通常は刺激にならない“噛む”ことも刺激となり痛みが生じることがあります。
当院にいらっしゃった50代の患者さんでは噛んだ時に奥歯に痛みがありました。全体的に歯垢が多く、歯茎も腫れています。前歯は浮いた感じ、むず痒い感じを訴えられました。
これらは歯周病で見られる典型的な症状です。歯垢はお風呂の排水溝についているぬめりと同じイメージ。排水溝のぬめりを取らないままでいると、どんどん細菌が増殖して嫌な臭いがします。歯磨きで落としきれていない歯垢も同じで、細菌が増殖して歯周病を引き起こすのも容易に想像できるのではないでしょうか。もちろん、歯周病菌の増殖によって歯周病独特の口臭も生じるため、口臭が気になって来院される患者さんもみえます。
唾液の作用によって、歯垢は石灰化され2週間程で歯ブラシでは落とせない硬い歯石となります。歯に強固に付着し、より歯周病菌の住みやすい環境を作り出すため、歯石の放置は歯周病の進行に繋がってしまうのです。
「自分は歯周病だと思いますか?歯周病ならばどの程度ですか?」と聞かれ、正確に答えられる人はどのくらいいるでしょうか。歯周病は“サイレントキラー(静かな殺し屋)”とあだ名がつくほど、無症状で進行していくもの。自分は歯周病ではないと思って歯科医院での検診に行っていない30代以上の方は特に注意が必要です。「なんか歯が伸びた?」と思ったら、急に抜けてしまう例も……。
若年層で生じる歯周病の兆候
歯周病が引き起こす一般的な症状「噛むと痛い」「口が臭い」
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一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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