恋愛・結婚

スマホの機種変を望んでいた妻を、乗り換えキャンペーンに誘ったら不機嫌に…何が悪かったのか?苦悩する夫の弁

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。コミュニティではさまざまなグチや悩みなども共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。 「以前、パートナーが『スマホが古くなってきたから、機種変更したい』とぼやいていたんです。偶然お得な乗り換えキャンペーンを見つけたから、パートナーにも喜んでもらおうと思い、一緒に手続きしに行ってきたんです。なのに、パートナーからは感謝どころか不満ばかり……。一体、何様のつもりなんですかね……」(相談者のAさん)  今回はこのセリフの背景に迫りたいと思います。
モラハラ

写真はイメージです

 パートナーとの関係危機をきっかけにGADHAに参加したAさん。すきま時間にコミュニティのSlackを読んでいるうちに、職場での人間関係の悩みにも通じるところがあると感じたそうです。そこで思い切って当事者会にも参加してみたところ、自分と同様、知らないうちにパートナーに加害してしまっている人や、人間関係に悩みを感じている人が少なくないことを知り、同時にそうした人たちが「変わりたい!」と懸命に取り組む姿に勇気をもらっていると言います。  そして、Aさんは「自分も変わりたい!」と、パートナーへのケアを意識するようになった矢先に起きた出来事についてこう語りました。 「ここのところ、パートナーが『スマホのバッテリーの持ちが悪いから、そろそろ機種変更したい』って、よくぼやいていたんです。それで先日買物に行ったら、偶然、携帯電話の乗り換えキャンペーンをしていて、お得に機種変更できる絶好の機会だった。子どもにも、進学に伴い、新たにスマホを持たせたかったので、この際、思い切って手続きをすることにしたんです。  手続きには、どうしても本人の同席が必要でしたが、キャンペーン終了までに家族全員で行けそうな時は、その日以外にはもうなかったんです。だから、パートナーが仕事から帰宅するのを待って、その日のうちに急いで手続きしに行きました。新しい機種にも変更できるし、スマホのデータ通信量も増やせるし、月々の利用料も安くなり良いことづくめでした。しかし、パートナーは『今日じゃなきゃダメなの?』とか文句ばかり……。    確かに、自分の予想以上に手続きに時間はかかりました。もちろん、パートナーも自分も翌日は仕事でしたし、子どもが疲れているのもわかっていたので、少しでも早く帰宅できるようにと自分も精一杯努力しました。それなのに、パートナーは料金プランの詳細確認など、余計な口出しをするので、さらに時間がかかってしまって……。  長くても2時間くらいかなと予想していましたが、結局なんだかんだで3時間以上。早く帰りたいんだったらパートナーも協力してくれたって良さそうなのに。パートナーは子どもに当たり散らし始めるし、その日は本当に疲れました」  この話だけを聞けば、Aさん(加害者)のパートナー(被害者)こそが自分勝手なモラハラ人間なのではと思う人も多いでしょう。DV・モラハラを知らない人が素直に聞けば、そう思うのも自然な内容です。

パートナーを喜ばせたかったAさんの誤算とは

 しかし、加害者自身からは見えていない視点があるかもしれません。そこで、僕はAさんに質問してみました。 「Aさんのパートナーのニーズは何だと思いますか?」  すると、Aさんは次のように答えてくれました。 「やっぱり『スマホの機種変更をしたい』じゃないですか?自分で『バッテリーの持ちが悪い』『機種変更したい』って、よくぼやいていたんですから」 「なるほど。では、ニーズが満たされるはずのパートナーが喜んでいないのは、どうしてだと思いますか?」と僕は聞いてみました。 「え?あ、確かに。うーん……」Aさんは沈黙してしまいました。  僕は質問を変えてみました。 「では、この時のAさんのニーズは何でしたか?」  するとAさんは「それはやっぱり『パートナーを喜ばせたい』ですね。あと、『お得なこの機会を逃したくない』という気持ちもあったと思います」とすぐに答えてくれました。  そこで、重ねて聞いてみました。 「では今回、乗り換えキャンペーンの手続きでAさんが満たそうとしていたのは、誰の、どんなニーズですか? せっかくパートナーのためを思ってやっているのに、パートナーがさっさと喜ばなくてがっかりしたり、イライラしたりしていませんでしたか?『俺がお得って言ってるんだから、あれこれ確認しなくてもお得なんだよ』みたいな」  Aさんは、ハッとした様子で答えてくれました。 「あ……パートナーのニーズではなく、自分のニーズを満たすための行動になってしまっていますね……。しかも、『パートナーを喜ばせたい』ではなく、『パートナーから認められたい』にすり替わっています」  今回も、以前の記事に書いたケースと同様に、Aさんの行動の目的は残念ながら「パートナーに喜んでもらうこと」から、「パートナーから自分が認められること」になってしまっていました。もっと言えば「(自分の勝手な)計画を達成すること」へと、いつの間にかすり変わってしまっています。
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Aさんはどうしたら良かったのか?
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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