新東名建設を非難した大マスコミは猪瀬氏に土下座せよ!【清水草一氏】
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
1987年に閣議決定され、御殿場JCT―三ヶ日JCT間の開通まで約15年かかった新東名。一度に162kmもの高速道路が開通するのは、日本の高速道路開通史上最長だとか。最終的に新東名は、海老名南JCT~豊田東JCT間で全長254kmになるそうだ。これで東名の渋滞は劇的に減少するのか? 高速道路研究家として分析しました
清水草一=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu
4月14日に新東名が開通してから、世の中ちょっとしたお祭り騒ぎだった。休日の新東名のSAは、連日大人気の大混雑。マスコミの論調も「渋滞が緩和される」「災害にも強い」とほぼすべて肯定方向だ。
SAの充実は民営化の成果。新東名の開通で日々の物流もスムーズになる。これは日本経済にとって確実にプラスであり、先進国として最低限の投資でもある。実にめでたいことなのだ。
がしかし、思い出してほしい。10年前、道路公団民営化が決まった当時の大マスコミの態度を。新東名等、ほとんどの路線が建設続行になったことを、「道路族に擦り寄った」だの「骨抜き」だの「むしろ改悪」だのと、非難の大合唱だった。
新東名なんぞ、「すでに東名があるのになぜ必要なのか」「利権だ!」と、最大のヤリ玉とされた。それを誰ひとり反省していない。まったく無責任である。大マスコミ各社は、いまさらながら猪瀬直樹氏に土下座してもらいたい。
ところで新東名を走ると、不思議なことに気づくはずだ。それは、路肩が異様なほど広いことである。というより片側3車線分の幅があるのに、それをわざわざプラスティックポール等で狭くして、片側2車線で開通させている。実にもったいない。
理由は、もともと6車線で設計・建設が進んでいたのに、民営化に伴って、建設費削減のため「4車線とする」と決められからだ。実際には6車線の幅で造っていたので、後から4車線にしたってほとんど節約できないのだが、そうでもしないと当時の世論は納得しなかった。実に馬鹿馬鹿しいが、これはマスコミと国民の集団ヒステリーが引き起こした喜劇だ。
が、敵もさるもの。NEXCO中日本はプロの高速道路屋であった。162kmのうち4割弱の区間に、「付加車線」を取りつけてある。これについてNEXCO中日本は、「混雑防止のため、警察と協議の上、インターチェンジやSA/PAの合流部分の前後に、付加車線を設置しました」と言っているが、事実上の片側3車線区間だ。建前上はあくまで片側2車線なので“付加車線”だが、せっかくの設備を生かすための、感動的な方便なのである。
新東名は、片側2車線でも当面は十分さばける。ただし事故や工事などで車線規制が行われると、たちまち渋滞が発生する。やろうと思えばすぐ拡幅できるのだから、全線片側3車線あったほうがいいに決まっている。
NEXCO中日本様に於かれましては、是非、徐々に付加車線を拡大し、「いつの間にか全線付加車線が付いてました」という状態にしていただきたい!
【後編】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/207768
東名・大和トンネルの渋滞は暫定拡幅で解消できる
この連載の前回記事
ハッシュタグ