“世界一売れた乗用車”新型ビートルは愛されるのか?
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
写真(https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=231759)の左端のクルマを見ると、少し年配の方はビートルではなくワーゲンと呼んだりしますが、それは全くもって大正解なわけです。それにしても、こうして襲名披露のように3世代を並べてみると、初代のコンパクトさと3代目の大型化がよくわかるというもの。ゴルフかザ・ビートルか、悩む人が増えるかもしれません
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
望月浩彦=写真 Photographs by Mochizuki Hirohiko
高度成長期もバブルもなんにも知らない氷河期読者諸君、こんにちは! 貧しい生まれの諸君らには縁がないと思うけど、僕はブルジョア育ちだったので、物心ついたころには、家に外車があったんだ。
その名は“ワーゲン”。当時はビートルなんて言う人は誰もいなくて、日本人はみんな「ワーゲン」とか「カブト虫」と呼んでいたのさ。それに乗って家族そろって伊東のハトヤに行ったんだよ。ブルジョワだろう?
このワーゲン、正確には「フォルクスワーゲン・タイプ1」という車名だったんだよね。「ビートル」は英語圏で付けられた愛称で、’98年にニュー・ビートルとして復活した時に正式な車名になったということなんだ。このコラムは勉強になるね。
この元祖カブト虫は、ヒトラーの国民車構想から生まれて、戦後、世界中でバカバカ売れまくって、今でも「世界一売れた乗用車」なんだよね。いわば戦後の世界的モータリゼーション期における、地球的国民車なわけだよ。イギリスではミニ、フランスでは2CV、イタリアではフィアット500が国民車だけど、カブト虫はそれらをひっくるめた、世界の国民車だったのら。
そのカブト虫が’98年に復活したのは、フォルクスワーゲン車のアメリカ市場での大不振を打破するため。カブト虫の後継車たるゴルフが、アメリカじゃさっぱり売れなかった。代わりにホンダ・シビックがバカバカ売れたんだから、アメリカ人ってゴルフみたいな超優等生はダメで、ちょっとスキのあるクルマが好きってことなんだね。
思惑通りニュー・ビートルは、アメリカでそこそこヒットして、相乗効果で他のフォルクスワーゲン車も売れるようになった(ゴルフのセダン版・ジェッタが中心)。んで、アメリカに次いで2番目に売れたのが日本。あの機能性を無視したオモチャみたいな半円形デザインが、カワイイって受けたんだね。
では今度の新型「ザ・ビートル」はどうか?
【後編】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/231758
― “世界一売れた乗用車”新型ビートルは愛されるのか?【1】 ―1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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