更新日:2012年06月06日 13:43
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多摩川沿い“有料BBQ場”がヒドすぎると苦情相次ぎ…

 BBQシーズン到来! 週末ともなれば、山へ、川へと繰り出す家族も多いことだろう。だが、都会の喧騒を離れて避暑地でBBQを楽しむなんてのは一握りの人間だけ。おのずと、我々の主戦場は都心部のBBQ場となりがち。ただ、5月20日に人気エリア、多摩川沿いのBBQ場を訪れた取材班はトンデモない光景を目の当たりにすることに……。
川崎市の多摩川沿い有料BBQ場

BBQ場からはるか遠くまで続く行列。その長さはザッと300mを超えていた。待ち時間はなんと2時間……

「朝11時からもう1時間以上並んでいます。持ってきたビールがぬるくなっちゃうので、並びながら3本も空けてしまいましたよ。これから合流する人もいたんですけど、『なかなか入れないよ』って教えてあげたら、来ないって言いだしちゃって……」  こうボヤいていたのは、二子新地駅から徒歩2分、神奈川県川崎市が管理する多摩川沿いのBBQ場前で出会った20代の男性だ。先発隊3人は朝9時からBBQ場入りを済ませ、火起こしも済ませて準備万端。だが、20代の男性だけはBBQ場前にできた数百mはあろうかという行列に阻まれ、なかなか合流できずにいたのだ。  多摩川BBQ場を管理する川崎市は’11年4月から有料化(1人500円、子供は無料)。管理人を配置し、利用者の管理を行う体制を整えることで、大量に散乱したゴミの山や近隣住民の迷惑も考えずに花火を打ち上げる輩、スピーカーを持ちこんで大音量で“プチレイヴ”を開催する若者たちの排除に動き出した。  今年に入ってからは、指定管理業者を選定し、さらにゴミ問題などへの対応を強化。さらなるサービス向上の名のもとに改善を進めているのだが……利用者からはむしろ不満の声のほうが高まっていたのだ。  その最大の原因が、件の大行列。入場するには、3分程度の講習を受けなくてはならないのだが、講習そのものは、スピーカーを手にした係員が「花火・音響等の持ち込み、使用は禁止です」「多摩川への入水は禁止です」「刺青、タトゥーは見せないでください」「ゴミは分別して指定の場所に捨ててください」「注意事項を守れない人は退場してもらうこともあることをご理解ください」などと、一方的に話すだけのもの。注意書きを記した紙っペラを配るだけでも事足りそうなものを、わざわざ講習にするものだから列が前に進まない……。  子連れの家族などは「並んでいる間に、子供が熱射病で倒れたらどうするつもりなんでしょう」(30代女性)と憤るほど。「『今から2時間も待ってたらBBQが終わっちゃう!』と係員に訴えたら、ここは18時までやってるから大丈夫ですよ~と軽くあしらわれたのが腹立った!」(30代男性)という人も。
川崎市の多摩川沿い有料BBQ場

BBQ場入り口から50m地点。子連れの家族は、子供をあやすのに疲弊していた……

 やはりお役所仕事なのか、融通がきかないのだ。実際、記者も並んでみると、30分しても50mほどしか進まない。それでもBBQ場はまだ200mほど先だ(遠すぎて、BBQ場の様子は見えない)。後になって気づいたのだが、講習を受ける直前の列に、次々と割り込んで行く人たちがいる……。要は行列の最前列で場所取りを行い、あとからやってくる仲間を招き入れ、すぐに講習を受けさせてBBQ場に送りこもうという、ずる賢い人たちの仕業もあって、列が前に進まなくなっていたのだ。
川崎市の多摩川沿い有料BBQ場

BBQ場入り口直前では、係員から10人一組程度で、3分間ほどの講習を受ける。といっても、パネルにある文言を読み上げるだけ。これなら、プリントして配ってもよさそう

 このほかにも頭の回る人がいた。20代の若者が自慢げに話してくれた。 「朝10時には来て、準備していたヤツらが3人いたので、1人のヤツにそいつらの“シール”をこっそり持って来てもらって、そのシールを貼れば、列に並ばずに堂々と中に入れるんですよ」  講習を受けて、500円を支払うと、入場手続き完了のしるしとしてステッカーが一人一人に渡される。それを貼っておけば出入りは自由。この制度を利用すれば、行列に並ばずとも受付をスルーできてしまうというわけ。BBQ場内に先に入った3人の仲間がいたら、1人が3人分のステッカーをコッソリ持ちだす。そのステッカーを場外で待つ2人に渡して、3人で再入場するという具合だ。 「管理人は『ステッカーがないとBBQ場から出ることはできません』とか言ってますけど、夕方4時、5時になったら一斉にみんな帰り出すでしょ。その人ごみにまぎれ混んでしまえば、ステッカーなんて買わずとも出れますよ」(20代の若者)  こんな利用者はごく少数だとは思うが……管理を強化したばかりに不正入場が蔓延し、採算割れとなっては元も子もなし。ならば、行列に並ばなくて済むように、入場システムを簡略化すべきと思っていたら、川崎市は早くも対策を打ったという。川崎市建設緑政局緑政部多摩川施策推進課の担当者が話す。 「実は、かなりの数の苦情がこちらに寄せられたもので……すぐに現場の係員を増やしたんです。1グループずつ講習会を開いていたところを、一度に3グループが講習を受けられるように変更しました。完全に行列が解消できるわけではありませんが、もう2時間待ちなどということはありませんよ」  苦情がピークに達した5月20日の翌週26日には係員を増員。これにより、入場待ち時間は長くても20~30分程度に短縮されたとか。30分だったら……ビールを2、3杯傾けるのにはちょうどいい時間。BBQ場前のプチ行列が夏の風物詩となる可能性もありそうだ。
川崎市の多摩川沿い有料BBQ場

入場してもBBQ場内は人だらけ。この日は4000人以上の利用者がいたという

取材・文/池垣完
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