消費税を上げなくても日本の税収がアップする方法
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
環境性能に優れたクルマいわゆるエコカーを新車で買うと、普通自動車は10万円、軽自動車は7万円、国から補助金がもらえるというエコカー補助金制度。そんなエコカー補助金が、もうすぐ予算が尽きて終了する見通しだ。果たして日本経済にとって意味のある政策だったのか? 三橋貴明先生に聞いてみました
【三橋貴明×清水草一】
⇒【前編】はコチラ「【エコカー補助金】日本経済にはどんな効果があった?」
https://nikkan-spa.jp/270325
◆補助金を出したぶんは税収で戻ってくる!
清水:今回のエコカー補助金は、予算が約3000億円でしたけど、その間自動車の売れ行きがどれくらい伸びたかというと、対前年比で約50%増。台数では、1~6月で約100万台増えました。1台150万円として、1兆5000億円。最低でもそれだけGDPを押し上げたわけですよね
三橋:そういうことです。でもそれだけじゃないんですよ。経済には乗数効果というのがあって、新たな消費が生まれると、それに伴って所得や投資が生まれるんです
清水:えーと、自動車メーカーが期間工を増やして、無職だった人が給料をもらい始める、とかですか
三橋:そうです。投資、つまり工場の増設なんかがあれば、さらに雇用が生まれるので、さらに所得が増える。所得が増えれば、クルマ以外の消費も増える。つまり、クルマがたくさん売れれば、近所の八百屋の売り上げも増えるかもしれない。それが乗数効果です
清水:それは、エコカー補助金の場合、どれくらいあるんでしょうか
三橋:もともと自動車は供給能力が過剰なので、投資まではあまり行ってないでしょうが、所得は確実に増やしてますから、最低でも2倍はあったでしょう
清水:1兆5000億円の2倍、約3兆円ですか
三橋:そうですね
清水:税収はだいたいGDPの1割だから、GDPが3兆円増えたら、税収は3000億円増えるってことですよね!来年度以降だけど
三橋:そう。3000億円の補助金を出しても、税収で戻って来る。国は損しないんです
清水:じゃ、もっとやったほうがいいじゃないですか! タダで景気がよくなるなら
三橋:ただ、同じことをずっとやってると効果が薄れてくる。だから、エキセントリックなことを言うと、例えば「10年以内にエコカー以外は走ることを禁止します」とかやっちゃうんです。そうすれば、10年間に6000万台の新規需要が生まれますよ
清水:それはヤだな……(笑)
三橋:私もBMWに乗っているので、個人的には困るんですけどね
清水:僕も困ります(笑)
三橋:でも、アナログ放送からデジタル放送への転換がそうだったじゃないですか。あれで一気にテレビの買い替えが進んだ。あるいは、耐震住宅への建て替え補助をするとか。費用の4割を補助しても、国としてはモトが取れますよ。GDPが増えれば所得が増えて、フリーターだった若者も正社員になれて、クルマや家電だって買うようになる
清水:次は家ですか……
三橋:道路だっていい。いまだに外環道ができてないなんて、こんなの先進国じゃありえないじゃないですか。防災もままならない。だから例えば、これから毎年建設国債を20兆円発行して、一気に高速道路を造る
清水:げっ! 今は年1兆円くらいなのに、それを一気に20兆円に!?
三橋:使い道は高速に限りませんけど(笑)。それだけで年4%、GDPを押し上げてくれます。プラス、インフレ目標を3%にして日銀が通貨を発行すれば、合計7%。それが10年続けばGDPは2倍です
清水:景気がよくなって税収も2倍になる。そうなりゃみんなハッピーですね
三橋:今、消費税を倍の10%に上げたって、税収を2倍になんかできないどころか、逆にGDPが縮小して、税収は必ず減りますよ
清水:うーん、なのになぜ財務省は、あれほど消費税を上げたがるんですか?
三橋:財務省は税収を増やしたいんじゃなくて、増税をしたいからです
清水:えっ、なんで!?
三橋:消費税率を上げれば、各業界に軽減税率を割り当てて、そこに天下りできるからですよ
清水:利権ですか……
三橋:それに財務省では、増収じゃなく増税を実現した人が出世するんです。そういう文化なんです
清水:出世ですか……
撮影/山川修一(本誌)
― 日本経済のためにもエコカー補助金は“とりあえず”延長すべき!【2】 ―
『ぼくらの日本』三橋 貴明 (著) 経済成長を知らない世代へ |
この連載の前回記事
ハッシュタグ