30代半ばで童貞ですが、早く結婚したい【佐藤優の人生相談】
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆周回遅れの秀才(ペンネーム) 会社員 男性 34歳
私は30歳を過ぎても女性経験はおろか、交際したこともほとんどありません。そこで一念発起して結婚相談所に登録してみましたが、成果が上がりません。お客様からお見合いを紹介される場合もありますが、それもうまくいきません。
友人はいて、仕事も給料は安いですがお客様にも同僚にも恵まれやりがいもあるとは思うのですが、時折「家族を持ち、子育てして社会に送り出す」という生き方に背を向けているようで、空しさを感じることも多いです。父親からは「思いやりがないからご縁が実らないんだ」と言われ、先日喧嘩して実家を出ました。
出会いは偶然のものであって、無理に探すことに意味はないのかもしれませんが、このまま自然に任せておいては前進しないと思います。私は、何をしたらよいでしょうか?
◆佐藤優の回答
焦ることはありません。人生には必ずよい出会いがあります。その機会を逃さないように注意していれば、よい伴侶が必ず見つかります。周回遅れの秀才さんは、「30歳を過ぎたら女性経験を持っていないのはおかしい」という観念に自縄自縛になっています。その焦りが、表情や言葉に無自覚のうちに表れているのだと思います。それだから、お客様や結婚相談所から紹介された相手が、「この人は激しすぎる」と引いてしまっているのだと思います。30代で童貞で、異性との交際歴がゼロという人はいくらでもいます。その現実に対する焦りから自分を解放する必要があります。その関連で、岡田尊司先生のマインド・コントロールに関する研究を読んでみることをお勧めします。岡田先生は、「トンネル」というキーワードを用いてマインド・コントロールが生じる環境について説明します。
〈トンネルは、細く長い管状の通り道で、外界から完全に遮断されている。入口を入れば、後は出口まで光はない。/そこには、二つの要素がある。外部の世界からの遮断と、視野を小さな一点に集中させるということだ。トンネルの中を潜り抜けている間、そこを進んでいく者は、外部の刺激から遮断されると同時に、出口という一点に向かって進んでいるうちに、いつのまにか視野狭窄に陥る。〉(『マインド・コントロール』15頁)
「トンネル」は、カルトのような反社会的団体だけでなく、健全な組織にも存在すると岡田先生は強調します。
<こうした「トンネル」は、危険な目的に利用されるだけでなく、実は、世間的には健全と思われている目的にも頻用されている。たとえば、スポーツチームやクラブに所属することも、ある種のトンネルに入ることだ。難関校を目指して、受験のための進学クラスに入ったり、優秀な子どもたちを集めた塾に通うことにも、トンネルの要素がある。/そこは、閉ざされた小さな世界となり得るし、そこの価値観やルールが絶対的なものとして、その子を支配する。(中略)こうした“良い”目的のトンネルであっても、トンネルである以上、さまざまな副作用や危険を生じ得る。(中略)目的が達成できないと、絶望して自殺しようとしたり、すべてがダメのように思い込んで、自暴自棄になることもある。>(前掲書18~19頁)
周回遅れの秀才さんは、早く結婚しなくてはならないという観念の「トンネル」に入りかけているのではないでしょうか。これは危ないです。同性の友人がいて、職場にも満足しているのですから、その基盤から徐々に女性との関係をつくっていくことをお勧めします。これまでの人生で、どういう「トンネル」に入っていたかを考え、そこでの副作用について反省すれば、問題の所在がはっきりします。そこにたどり着けば、自ずから女性との人間関係構築の道筋が見えてきます。
【今回の教訓】
あなたは「トンネル」に入りかけている
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【佐藤優】
1960年生まれ。1985年に外務省入省。在英、在ロシア連邦大使館、国際情報局分析第一課で活躍。2002年に背任の容疑で逮捕。『インテリジェンス人生相談』個人・社会編に続く第3弾、新刊『インテリジェンス人生相談<復興編>』が発売中!’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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