家族連れまで…“密漁”した魚介類を売りさばく人々
昨今、海や川での密漁行為が増加している。密漁といえば、暴力団の資金源のように、組織的な犯行がとりざたされることが多いが、実は、立ち入り禁止区域に入る不法な釣りや、禁漁とされている魚介類を獲るなど、個人の“素人”による犯行も横行しているのだ。逮捕されるかもしれないリスクを背負ってまで行為を繰り返す、素人密漁者の姿を追った。
<宮城県>
◆「アワビを買ってくれ」高級食材を売りさばく素人密漁者たち
宮城県気仙沼は三陸随一のウニやアワビの名産地として知られるが、同時に密漁にも頭を悩ませている。
「このへんは昔から密漁者が多い。最近では、何の気なしにアワビを獲って帰る素人さんも多くて……漁師にとっては死活問題だよ」
そう話すのは、気仙沼漁協組合の倉田正行さん(仮名・41歳)だ。漁協ではこうした密漁者に対し、海上保安庁とも協力したパトロール態勢を敷いているが、現場を押さえるのは容易ではないという。
「巡視船は浅瀬まで入っていけないから、みんな浅瀬で獲るんだ。もし陸でバレそうになっても、すぐ海に放り投げてしまえば捕まることはないからね。やり方がどんどん小賢しくなってるよ」
では、密漁されたモノはどこへ流れているのか。「ある日突然、“営業”の電話がかかってくる」と話すのは、気仙沼の飲食店関係者だ。
「『今日はアワビがキロ○○円ですよ』って、売り込みの電話があるんです。実際、市場価格よりも3~5割は安く手に入るから、買っている店は多いと思いますよ。プロだけじゃなく、素人もやっているはず。違うヤツから代わる代わる連絡が来るから」
密漁モノとして出回っているのは主に、ウニやアワビといった高級食材だ。通常、それらは漁協で決められた「開口日」にしか漁をしてはならないため、市場に出回る量は限られている。
「なのに、年中アワビが置いてあるなんておかしいでしょ? それに小さな民宿で『一泊二食付きアワビコース8千円』なんてプランがあるけど、正規ルートで買ったモノなら採算が合わないはずです」
また、こんな驚きのケースも。
「突然店にやって来た家族連れの男性から、クーラーボックスいっぱいに入ったアワビを見せられ、『買ってください』と言われた。たぶん、同じ場所で密漁をやっていた地元のヤツから聞きつけたんでしょうね。そういう“買い手”の情報とかが出回っているんですよ」
もはや素人の域を越えつつある。
― 海で!川で![素人密漁者]が大暴れ【4】 ―
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