行方不明の身分を売った「被災者ゴースト」たちのいま
震災直後から被災地に入り、被災者を相手に一儲けを企んだ犯罪者たち。こうした震災犯罪の手口を小誌ではこれまで何度も報じてきた。そして東日本大震災から2年が経過した現在、復興途上の東北の地で、彼らは暗躍し続けているのだろうか。取材を進めていくと、当時、真っ先に被災地入りした犯罪者たちの間には明暗がはっきりと分かれていた!
【被災者ゴースト】詐欺の末端要員に利用されたものの、ほかに使い途ナシ
震災前から多重債務などで追われる身。ならば、被災者として「行方不明のまま」となり、債務も人生もリセットして再起を図ってはどうか――。そんな裏社会からの提案に応じ、自ら「存在しない人間」=被災者ゴーストになった人たちがいる。震災便乗ビジネスの最も暗部である「人身取引」が当時は行われていた。
「震災で生まれた被災者ゴーストは当初、詐偽の末端要員として使われ、原発作業員として何度も名前を変えつつ、福島第一原発で線量を超過しまくりながら、働かせていたようです」と話すのは、事情に詳しい詐偽グループ関係者のTだ。犯罪社会の奴隷階級として使い回して「最終的には臓器を売買させ、ゴースト一人につき数千万円は稼がせる」と豪語していた裏稼業人たちだが、ここもまた目論みは外れたようだ。
「ほとんどのゴーストはある程度稼いで、そのカネで実在する他人の名義を買い取り、そいつに成りすまして第二の人生を歩み始めているみたいです。例えば、聞いた話では、同じく震災で行方不明になっている人間の親族から名義を買い取ったり、外国人の名義を手に入れて日本人を捨てたりしたゴーストもいた。『実は生きていました』って名乗り出た、ゴーストも中にはいたかもしれませんね」
震災発生時、被災者ゴーストを計画した者たちは「北斗の拳みたいな世界になる」と考えて動いたわけだが、とんだ見込み違い。思った以上に復旧が早く、生活再建を果たした行方不明者の親族が捜索を開始した。そのため、身元がバレるリスクが高まった被災者ゴーストを持て余すようになったのは言うまでもない。
「自分の身柄を売って人生をリセットしようと考えるようなヤツらだから、被災者ゴーストも自慢できるような人間じゃない。彼らが裏切って警察に『こういう事情で行方不明のままにされました』と証言されたら、囲っている人間は破滅。力関係が微妙なんですよね。だから、ある程度稼がせたら次の人生の名義を売ってやって手放すのがベストな落としどころだった。これが海外だったら本当に一生奴隷なんでしょうが、やっぱり日本は平和だなって思いましたね」
行方不明を利用した不謹慎な手口が失敗したのも因果応報か。
― 震災で一儲けを狙った[火事場泥棒たち]の今【4】 ―
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