下水道の老朽化で起きる「道路陥没」。全国で年間3500件発生
―[[首都圏インフラ]老朽化の危機]―
我が国で上水道が急速に整備されたのは’57年の水道法制定以降のこと。ここにも高度経済成長期におけるモーレツなインフラ大拡張の爪痕は刻まれており、老朽化した水道管が散在し、改修のメドが立たぬまま看過されている。
例えば埼玉県秩父市では、水道管の総延長の約2割が敷設後40年を超え、供給される水の3割が漏水しているという。人口の減少とデフレによる企業の撤退から財政は逼迫し、現状での改修を困難と判断した市は、今年度から17%もの水道料金値上げに踏み切らざるを得なかった。
他の首都圏自治体においても値上げの流れは波及しつつあり、いずれは「水道代を抑えるために、喉の渇きに耐える」時代が来てもおかしくないのである。
◆最長寿インフラの下水道に潜む危険
さらに見落とされがちな下水道は、上水道に輪をかけて深刻だ。
「インフラのうち、一番古いのは下水です。古いからこそ最も深いところを走っていて、造り替えることができない」(防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏)
生活インフラとしての優先順位が低く、軽視されがちな下水道。下記のグラフから一目瞭然だが、下水管の老朽化や手抜き工事による道路の陥没が、一昨年だけでも全国で約3500件発生しているのだから、おちおち道路を通行できないことにだってなり兼ねないのだ。
⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=854400
「阪神大震災のときも、明治時代に敷設された古い下水管が大きなダメージを受けました。しかし、他のインフラの復興に優先順位を振り分けたため、後回しにされてしまったのです」(同)
◆韓国・ソウルでは陥没事故が多発
道路が陥没の危機に瀕しているのは日本だけではない。東洋大学教授の根本祐二氏は、お隣・韓国も同じ問題を抱えているという。
「ソウル市では陥没事故が多発しています。今年2月には舛添都知事とソウル市長の会談で、道路陥没対策に関する技術を提供する合意書が締結されました。陥没事故は路面が空洞化することで発生するのですが、穴を埋める作業は難しいものではありません。問題は空洞化している場所の特定ですが、日本ではすでに民間企業が自治体と協力して調査を始めています」
調査に関しては一歩リードしている日本。果たして事故を防ぐことはできるのか……。
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