更新日:2016年10月27日 21:36
エンタメ

園子温監督「日本人には僕の作品は不評」――スペイン・国際ファンタスティック映画祭受賞2015

 11日午後3時、スペインのシッチェスで行われている国際ファンタスティック映画祭で、ファンタスティック映画(ホラー、スリラー、SF、サスペンス)への貢献度を表した「タイムマシーン賞」の授賞式が行われた。  日本からは園子温監督が受賞。監督は「本当に素晴らしい賞をいただいて感動しています。シッチェスに来るのも初めてなのにいきなりこんな賞をいただいて、この感動をなかなか言葉にするのも難しいです。大事に持って帰って玄関に飾ります。どうもありがとうございます!」と感謝の言葉を述べた。
記者会見に臨んだ園子温監督

記者会見に臨んだ園子温監督(中央)

 その後、会場を埋めた約1300人の大観衆は最新作『リアル鬼ごっこ』を鑑賞。上映会を終えた12日には、園子温監督の記者会見が行われた。 ――以下は一問一答 スペイン人司会者:今回映画祭ではあなたの作品が3本(『リアル鬼ごっこ』、『ラブ&ピース』、『みんな! エスパーだよ!』)上映されるわけですが、このことについてはどうお考えですか? 「いや本当に名誉というか、凄くうれしいです」 司会者:その3本はまったく違うのに紛れもなく園子温監督の作品になっているのには、驚かされます。どういうふうにあなたのエッセンスを盛り込むのでしょうか? 「それはもう自然にやっているので、自分を出そうという意識は特にないです」 司会者:『リアル鬼ごっこ』と『みんな! エスパーだよ!』には強い皮肉が込められていると思いますが。 「これも自然にシナリオを書いているうちにそういう方向になってしまう。癖というか自分の性質だと思います」 司会者:『ラブ&ピース』はティム・バートン監督が作りたいができない映画のように私には思えました。 「ティム・バートンの初期の映画は大好きで、ペンギン男の下水道のシーンなどは参考にしたかもしれません。しかし(『ラブ&ピース』の)シナリオは25年も前のものなので、ティム・バートン版のバットマンのどの作品だったのかは覚えていません。今回の3本の中では『ラブ&ピース』は、25年前に書いた台本を実現させようと一生懸命頑張って、やっと作れた映画なのでもの凄く特別なものです」 司会者:『リアル鬼ごっこ』には西村さん(西村喜廣/特殊造型プロデューサー)も参加していますね。西村さんの作ったものとCGをどういうふうに組み合わせているのですか? 「西村さんとは映画を作る前から友だちで、『自殺サークル』の時に特殊効果を頼んだのがきっかけで、以来ずっと一緒にやっています。(以下の数行ネタバレあり。未見の方はご注意を)『リアル鬼ごっこ』に関して言うと、バスが2つに割れるところは実際はほとんど実写というかCGがなくて。あとは西村が2つに割れた女子高生をいっぱい作って置いたという、非常に実はアナログな撮影をしました」 司会者:『自殺サークル』は私の息子が大ファンなのですが、漫画が先なのですか映画が先なのですか? 「映画が先です」 司会者:この会見には神楽坂さん(神楽坂恵/女優・監督夫人)も同席されていますが、彼女が参加する今後の作品について教えてください。 「最新作『ひそひそ星』では、彼女がアンドロイドの配達員役で主演しています。この作品はトロント国際映画祭でアジア最優秀作品賞をもらいました」 スペイン人記者:サウンドトラックについて質問します。作品によっては園さんが作曲しているものもありますが、自分でやるかやらないかはどこで決めるのですか? 「シンフォニーは僕は書けないので、例えば『ラブ&ピース』では歌の部分は僕が書きましたが、映画音楽に関しては人に頼みました」 本サイト記者:2つ質問があります。1つ目は、昨日『リアル鬼ごっこ』の上映に同席されたとしたら、スペイン人の観客の反応と日本人の観客の反応には何か違いを感じましたか? 「これはまあいつもの通りなんですけど、特に『リアル鬼ごっこ』のような映画は日本ではひんしゅくを買うというか嫌われるタイプの映画で、『自殺サークル』もそうでしたけど。ああいうのは日本人は楽しめない。どちらかというと不評を買います」 本サイト記者:2つ目は、それだけ言葉も文化も異なるスペインで、あなたの映画が受け入れられ称賛されることについてはどう考えていますか? 「まあそれに関していうとですね、実は率直に言って日本の観客が喜ぶ作品には海外では不評を買うこともあって……。いろんな意味でいつも海外での評価があって、それで『あっそうか、海外で評価されているのなら受け入れた方がいいのかな』というのが日本人の感情だと思います。だから海外に凄く助けられていて、それがなかったら日本ではあんまりうまく受け入れられていないかもしれないですね。それは三池さん(三池崇史監督。映画祭では『神様の言うとおり』、『極道大戦争』を上映)も一緒じゃないですか」 司会者:映画祭であなたの『新宿スワン』も上映したかったのですが、時間の関係で実現しませんでした。この作品について教えてください。 「やったことがないことをやるのが好きなんですけど、日本のブロックバスターというか商業映画です。そういうものを僕はやったことがなかったので。まあ何度もやることはないけど、非常に国内向けの映画なので海外の人にはあまり必要ないかもしれません」  スペインの会場では大拍手を浴びた園子温監督。海外での氏の人気ぶりには驚かされた。 <文/木村浩嗣:ナノ・アソシエーション>
おすすめ記事