「日本好き外国人」を急増させる絶好のチャンス!(下)――2025年の大阪万博は!?

インバウンドの世界各国比較(2016年)

2020年の東京五輪後もインバウンドを高水準で維持するために

 今年の11月、フランス・パリの博覧会国際事務局(BIE)総会で、2025年開催の国際博覧会(万博)の開催地が決まる。  当初の立候補地は、フランス・パリ近郊のサクレー、ロシア中部のエカテリンブルク、そしてカスピ海に面するアゼルバイジャンの首都バクーとわが国の大阪府の4エリアであった。  しかし、フランスのサクレーが、「採算が合わない」「政府が推進する財政再建との整合性」などを理由に立候補を取りやめたため、ロシア、アゼルバイジャン、大阪の3エリアでしのぎを削っている状況だ。  最大のライバルであったフランスの辞退は、日本にとって幸運である。しかし、投票結果は蓋を開けるまで分からない。11月の総会を祈るような気持ちで見守りたい。  というのも、2020年の東京五輪でインバウンド(訪日観光客数)4000万人の目標が達成されたとしても、伸びすぎたゴムが縮むように、その反動でインバウンドが縮小するとホテルなど観光関連産業が落ち込み不景気になる。  そうしないためにも、とりわけ「観光の経験値が高い」欧米諸国の人々に、日本の魅力を継続的に伝えて行くことが大事になる。  欧米人は、訪日動機として「日本の歴史・伝統文化体験」を上位にあげている。(【外国人が日本を訪れる動機とは――『英語対訳で学ぶ日本』は必携の書(2)】参照)

日本人が見ても面白い歴史博物館の充実が急務

 そのための方策の一つとしては、博物館、とりわけ歴史博物館の充実が急務である。  一つの成功例として、大阪には大阪城と難波宮(なにわのみや)跡に隣接する「大阪歴史博物館」(大阪市中央区)がある。  難波宮(京)は、京都の平安京(794年)、奈良の平城京(710年)、奈良の藤原京(694年)より遡(さかのぼ)る大化の改新(646年)の孝徳天皇の時代(前期難波宮)、その後、遷都を繰り返した聖武天皇の時代の734年頃(後期難波宮)の都であり、戦後になり昭和20年代末から30年代にかけての発掘により、その存在が明らかになった。

大阪歴史博物館の常設展示(難波宮の宮廷儀礼の再現、同館HPより)

 大阪歴史博物館は、その難波宮の宮廷儀礼などを原寸大で再現するなど、古代から中世、近世、近現代の大阪を分かりやすく展示している。  そのため「日本人が見て面白く」、さらに、外国人アドバイザーによる施設点検を行い、パンフレットの多言語化(従来の英語、中国語、韓国語に加え、フランス語、スペイン語、タイ語、アラビア語の新規作成)や、展示案内の多言語化、ボランティア解説の多言語化などに取り組み、外国人入館者は高水準を維持しているという。  ここで重要なのは、当の日本人が見て面白いかどうかである。一部の歴史学界にありがちな、研究者のバイアス(考え方や思想の偏り)がかかった一面的な視点での展示では、「日本という物語」を生き生きと描けず、有料入場者が低調な歴史博物館がある。その博物館でいくら多言語化を図っても、外国人入館者も増えないであろう。  日本の歴史や文化に関する英訳本も、ベースとなる日本文が生き生きとしていなければ、評判を呼ばないであろう。 今年1月下旬に発刊された『英語対訳で学ぶ日本』(発行=育鵬社、発売=扶桑社)が多少なりとも評判を呼んでいるのは、1テーマが日本文で400字ほどであるが、日本という物語を生き生きと描いているからであろう。  外国人入館者を増やし日本好き外国人を増やす上で、本書は参考になる。(了) (文責=育鵬社編集部M)
英語対訳で学ぶ日本 歴史と文化の111項目

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