都市の強靭化: 六本木ヒルズのエネルギー・イノベーション6

自立分散型エネルギーシステムによるBCD( 事業継続地区) の形成

 現状の一般的な日本のエネルギーシステムは、巨大な発電所にすべての施設を接続する一極集中型が基本だ。  こうしたシステムは、平時においては確かに効率的ではあるが、ひとたび中央の発電所がダウンすればそのエリアの施設がすべて活動休止に追い込まれる、という深刻な脆弱性を抱えている。  一方で、一極集中を緩和し、分散的に各地域において自立的に発電する「自立分散型」システムを導入すれば、仮に中央の発電所がダウンしても、すべてのエネルギー供給が途絶えるということはなくなる。  その意味において、一定程度の自立分散性を持たせることは、そのエネルギーシステムを抜本的に強靭化させることになるわけである。  もちろん、半世紀以上もかけて構築された今日の日本の一極集中型のエネルギーシステムを一朝一夕に自立分散型に改変する「イノベーション」は必ずしも容易ではない。  しかしそんななかで、この六本木ヒルズの事例は、 ⑴大都市のど真ん中に、 ⑵ 「中圧ガス管」という巨大地震に対して極めて高い強靱性を持つガスシステムをベースと して、 ⑶ 効率的かつ自立的に発電・熱を供給するエネルギーシステムを構築する、 というものであり、都市の一角全体を「強靭化」する極めて先進的なものであった。  こうした地区は今、巨大地震に襲われてもビジネスを継続し続けることが可能な地区であるという趣旨で、「事業継続地区」(BCD・Business Continuity District)と呼ばれている。  そして都市の中核部を、こうしたBCDにイノベート(改変)していくことで、その都市自身の強靱性を向上させるという都市のイノベーション(深い部分での質的変化)を導くことができるのである。

都市強靭化に向けた、都市行政とエネルギー行政のコラボレーション

 政府は今、こうした六本木ヒルズで示された、「中圧ガス管に基づくコージェネレーションシステム(CGS)を用いた、都心部における自立分散型エネルギーシステム」による事業継続地区(BCD)の形成モデルを、全国の主要先進都市に形成することを目指し、さまざまな取り組みを進めている。  そもそも、21世紀初頭に六本木ヒルズのシステムが構築された際にも、エネルギー効率の高いエネルギーシステムの普及促進を図る観点からの政府の補助金が一部導入されていた。  そんななかで今、「強靭化」の視点からのBCDの形成促進事業を「都市政策」の一環として進める制度が新たに導入されたのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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