「道の駅」による地方創生イノベーション1

「全国チェーン店」で地方衰退

 普段、私たちが野菜や魚、肉などを買う場合、それを買うことが地域や社会にどのような影響を及ぼしているかを考えることは、ほとんどない。  美味しいか安いか新鮮か──そういう基準で選択するのが一般的だ。同じことが「外食」についても言える。そこで食事することがどのような社会的影響を及ぼしているかに思いを馳せる人など、ほとんどいない。  しかし実際のところ、どこで買い物や食事をするかという判断は、実に大きな影響を地域社会にもたらしている。  例えば、筆者らが行った研究では、1万円の生鮮食料品を買った場合、それが「地元商店」であればおおよそ5300円が「地域」の人々に戻ってくる。  一方、「全国チェーン」の場合、「地域」に戻ってくるオカネはたった2000円程度に過ぎない、ということが示されている(それは京都市の場合だが、岡山市で行った調査でもほぼ同様の傾向であった)。  つまり商店街で買い物をした場合、地域外に流出するオカネは支払いの半分以下の4000円台に抑えられる一方、全国チェーンのスーパーで買い物をしてしまえば、地域の外に支払いの大半である8000円程度も流出してしまうことになる。  だから人々が皆、「地元店」でなく「全国チェーン」で買い物しているような地域では、その地域経済、地域産業は瞬く間に衰退する。 近年、あらゆる地方都市が衰退の憂き目にあっているが、その背後には「全国チェーン店」の普及と「地元店」の衰退による「地域マネーの域外流出」が大きく関わっていたのである。

「道の駅」で地域活性化

 そんな中で、この「地域マネーの流出」を食い止めるとともに、「域外マネーの吸収」を図り、(1)地域の資産を形成し、⑵雇用を生み、⑶地域産業を活性化すること等を通して地域活性化、地方創生を図る、という「地方創生イノベーション」とでも言うべき取り組みが、今、全国で官民連携の下で始められている。 「道の駅」と呼ばれる事業だ。  クルマを利用する読者の方なら、「道の駅」の存在はよくご存じだろう。国道や県道沿いにつくられた、高速道路のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)のようなものだ。  ただし、SAやPAは主として、ドライバーの休憩施設という色合いが濃いが、「道の駅」はそれ「以上」の存在だ。 つまり、ただ単にドライバーが休憩するだけでなく、さまざまな「付加価値」が提供されている。その土地の特産品やグルメサービス、観光情報、さらには、それ自体が観光の目的地となるような「観光施設」もつくられている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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