地域イノベーションを導く「リアル・どこでもドア」:高速道路のストック効果5

高速道路の「偏り」が、過疎と過密の一極集中構造を生み出した

 同じく鳥取や島根のあたりにも高速道路は整備されていない。  そしてそんな東北の日本海側や山陰地方のほとんどの地域の高速道路の「不在」エリアには、工業や商業が大きく発展する「白い」エリアはほとんど見いだすことができず、その大半がほとんど発展していない。  同じように太平洋側でも、紀伊半島、四国、大分・宮崎といったあたりにはほとんど高速道路が整備されていない。  そしてそんな高速道路不在地域には、工業や商業が大きく成長する「白い」エリアはほとんど見当たらず、その成長率も低い水準にとどまっている。  このように、「三大都市圏」等の大きく発展している地域には高速道路が豊富に整備されている一方、日本海側や東九州、四国、紀伊半島といった「過疎」と呼ばれる地域が広大に広がる地方には、高速道路が十分に存在していないのであり、その「帰結」として、商業や工業の成長率という点で大きな格差が広がってしまっているのである。  もちろん、高速道路の整備プロセスにおいて、人が多いエリアから優先的に作られていった、という歴史が存在していることは間違いのないことである。  が、それがまた、高速道路が「ない」地域の衰退と、高速道路が「ある」地域の発展を促し、地域間の格差はさらに加速度的に拡大していったこともまた、(本稿の前半で紹介した道路整備後の沿線エリアの発展事例を踏まえるなら)明白なのである。  こうして、三大都市圏、とりわけ東京に一極集中する国土構造が、日本列島においてできあがってしまったのである。  すなわち、現代日本の、大きな格差が広がった「都市と地方」、そしてそれらを含めた「一極集中構造を持つ格差ある国土」を作り上げた大きな要因が高速道路のネットワークの「偏り」であったのである。  そうである以上、過疎と過密の問題、あるいは、地方創生や三大都市圏・首都圏一極集中緩和を日本が目指すのなら、今日、十分に高速道路が作られていないエリアにおける高速道路インフラ投資が、欠くべからざる必要不可欠な取り組みなのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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