地域イノベーションを導く「リアル・どこでもドア」:高速道路のストック効果6

北海道の衰退を導いた、「青函道路」の不在

 ところで、「商業年間販売額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」、および「製造品出荷額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」が明らかに示しているのは、商業と工業の双方において最も激しく衰退しているエリアなのが「北海道」である、という事実だ。 「商業年間販売額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」、および「製造品出荷額の過去25年間の増加率の分布と高速道路網」を一瞥すれば、誰もが北海道だけが衰退を示すエリアで埋め尽くされていることを容易に見て取ることができるだろう。  もちろん、その背景には北海道東部にはほとんど高速道路が作られていない、という現実はあるのだが、それだけが理由ではない。  それだけでは、北海道と同様に高速道路がつくられていない山陰や四国、東北などとは比べものにならないくらいに、格段に激しく北海道「だけ」が全域的に衰退している事実を説明できないからだ。  それには、次のような理由がある。そもそも高速道路がその地域に抜本的な地域イノベーションをもたらすのは、その高速道路が「リアル・どこでもドア」として機能するからに他ならない。  例えば、東京郊外の「圏央道」に乗りさえすれば、日本中のおおよそのところに、高速で移動することができるからこそ、圏央道の沿線地に大きな地域イノベーションが生じた。  それは山陰地方や東北地方、四国地方の高速道路にしても同じだ。それぞれの地域の高速道路に乗りさえすれば、首都圏や三大都市圏、その他あらゆる主要な都市や港に「高速道路ネットワーク」を通して直接乗り入れることができる。  これこそ、高速道路沿線で商工業が発展する根本的理由なのだが、北海道だけは例外なのである。  九州は関門橋によって、四国は三本の本四架橋によって、本州の高速道路ネットワークと接続されている。  しかし北海道だけは、接続する高速道路は存在しないのである。かの青函トンネルは、鉄道トンネルであり、自動車トンネルではない。  このことはつまり、日本全国の主要都市や主要な港に対して、四国や九州は道路橋によって接続されているにもかかわらず、北海道だけは津軽海峡によって「分断」されていることを意味している。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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