「顔じゃなくて知性で女を選ぶ」男の無知性
―[鈴木涼美のおじさんメモリアル]―
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに連載する「おじさんメモリアル」第11回。
【第11回 うそっぱちチャラリーマンのわざとらしい内実】
大学3年生の終わりから大学院に入ってしばらく経つまで、私の職業が「飲み会」だった時期がある。仕事もしていたし、学校にも行っていたけど、すべては19時くらいからの飲み会のための前座のようなものであって、スケジュール帳は基本的に飲み会の場所と時間、面子が書いてあるだけだった。
飲み会というのは所謂合コンというようなものがほとんどだが、ワタシたち慶応ビッチーズ及び後輩のプッシーズは、別に恋人をつくりに夜ごとそこに通っていたわけではない。ただただ圧倒的な退屈をつぶしに、刺激的な夜を求めていた。なんのこっちゃ。まぁそんな90年代女性POPSグループの歌詞を地で行く若い肉体と精神を持て余してたわけです。合コン的な、一応男女が一堂に会する場に毎日顔をだしているにも関わらず、幹事業務と他の娘が幹事だった時のつきあいの飲み会参加の予定が立て込んでいて忙しく、たまにそういう場で知り合った人に、ご飯行こうよ映画行こうよなんて言われても、ごめん、3週間先まで夜は全部詰まってて……状態だったので、そこで素敵なパートナーを見つけようなんていう気は全然なかったようです。
合コンといってもほんとに、オシャンティなレストランやカフェバーでオシャレしてスパークリングをカチーンなんていうイメージじゃなく、いやそういうことも最初の1時間くらいはすることもあったけど、基本乳出しゲロまみれありーの、最終的には誰も連絡先交換せずにセックスだけはして帰るなんてこともありーの、わりと最低な女子大生だった。彼氏とか好きな人は他にいるし、オカネはキャバクラのお客さんとかからもらうわけだし、合コンで番号を交換する人というのは、私たちの人生では本当に通りすがりの、そこからまた飲み会が派生するだけの、ナニカでしかなかった。
⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で
【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」(http://www.gentosha.jp/articles/-/3708)を連載中。公式ブログ(http://lineblog.me/suzukisuzumi/)更新中
イラスト/ただりえこ 撮影/福本邦洋 写真/アフロ’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中『おじさんメモリアル』 哀しき男たちの欲望とニッポンの20年。巻末に高橋源一郎氏との対談を収録 |
『おじさんメモリアル』 著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年 日刊SPA!の連載を単行本化 |
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。 |
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論 |
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