医者の男が教えるセックスは本当に気持ちいいのか?――鈴木涼美の『おじさんメモリアル』
―[鈴木涼美のおじさんメモリアル]―
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに連載する「おじさんメモリアル」第10回。
【第10回 ドクター、ストップ!】
ちょっと値段設定高めの夜職のオネエサンたちが必ず一度は口にするぼやき。「世の中めっちゃ医者いるな」。そうですね、なんかキャバクラでもクラブでも、高級デリヘルやら交際クラブやらSMクラブでも、お医者さんってほんとよく見かけますよね。医師不足とは言え日本中には30万人の医師がいて、医者ってだけで限度額がとんでもないカード作れたりするわけなので、まぁそんなに不思議ではないけど。
当然、お医者様にもいろいろいて、過疎な村のご老人たちの面倒を一挙に引き受けている人からドクターカーを乗り回して寝る暇もなく救急医療現場を渡り歩く人もいる。しかし、そういう人はあんまり銀座のクラブでブラックカードをシャキーンとか出したり、コンラッドで高級デリヘル2時間延長したりしないので、夜のおねえさんたちが出会いがちなお医者はどちらかと言えば、まぁもちろん医学部入った当初の志は高く、診察中は心から患者様のことを思って、世の中ひとりでも多くの人の命を救いたいと思っているのでしょうが、オフはオフで充実させたい、またできれば命をすくいながらそれなりにお金儲けにも余念がない、といったタイプのドクターたちであります。
で、別にお医者になるのって大変なんだろうし、ワタクシたち人間、お医者さんにソッポ向かれたら膀胱炎ひとつ治せないし、どんなにえらい人もお医者にだけは頭があがらないし、ちょっと威張るくらい全然いいわけです。医師の息子が高校とかで威張ってるのはうざいけど、本人が医師の場合、威張ったぶん、病気になったらよろしくね、そしてヒルドイド軟膏とか差し入れてくださいね、安くケミカルピールできる美容外科の先生紹介して、とこちらもお医者様のお客様を持つ身としてそれなりに特権を享受しようとするわけだから。
ただし、まあ結構威張ってるし金持ちぶってるし、おねえさん側としても、ちょっとは話のネタにさせてもらいたい。その場にお医者さんがいない時にちょっとした話題になりがちなのは、題して「身体を知り尽くしているお医者さん、果たしてセックスは上手いのか」である。これは、非・お医者のお客や非・お医者の彼氏なんかからも、たまに聞かれることがある。
⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で
【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」(http://www.gentosha.jp/articles/-/3708)を連載中。公式ブログ(http://lineblog.me/suzukisuzumi/)更新中
撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中『おじさんメモリアル』 哀しき男たちの欲望とニッポンの20年。巻末に高橋源一郎氏との対談を収録 |
『おじさんメモリアル』 著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年 日刊SPA!の連載を単行本化 |
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。 |
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論 |
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