リスナー多数決でプロ棋士に挑戦「ニコニコ超将棋会議」観戦記
―[ニコニコ超将棋会議]―
6月22日、東京・千駄ヶ谷の東京将棋会館にて、ニコニコ生放送のリスナーがプロ棋士・西尾明六段に将棋で挑戦するイベント「ニコニコ超将棋会議」が行われた。
このイベントは、コンピュータ将棋ソフト「大合神クジラちゃん」(※1)の開発者・えびふらい氏が企画したもので、放送を観戦するリスナーが専用ツールを用いて指し手を投票し、プロ棋士と対局するというもの。もちろん、リスナーの多数決VSプロ棋士というのは、ほぼ前例のない珍しい企画だ。
※1「大合神クジラちゃん」は「第23回 世界コンピュータ将棋選手権」(https://nikkan-spa.jp/438662)で独創賞を獲得した。
ニコ生ユーザー発の非公式イベントとはいえ、相手はバリバリのプロ棋士で、記録と読み上げは中村桃子女流初段、リスナー側の指し手代理もプロ棋士養成機関である奨励会の知花賢三段(※2)が担当。さらに対局場は電王戦でもおなじみの特別対局室(※3)と、ほとんどタイトル戦と変わらない環境であった。
※2 現在、年齢制限ギリギリながら三段リーグで7勝1敗と絶好調中。初の沖縄出身プロ棋士誕生なるかと期待を集めている。
※3 テニスで言えばウィンブルドンのセンターコート、野球ならヤンキー・スタジアム、サッカーならカンプ・ノウなどのように、東京将棋会館のなかで最も格式の高い、プロ棋士もあこがれる対局室だ。
リスナー側は手持ちの盤面を使ったり、ニコ生のコメントで相談したりすることが可能だが、指し手は多数決によって決まる。そのため、もしもリスナーのなかにプロ棋士クラスの強豪がいても、必ずしもその人の指し手が反映されるとは限らない。プロ棋士を相手に、どれだけの力を発揮できるか、どんな勝負になるのかも未知数だ。
対局はリスナーの先手で、持ち時間は2時間ずつ。今回は特別に、チェスの世界で「フィッシャーモード」と呼ばれるルールを採用しており、1手指すごとにリスナー側に2分、西尾明六段に1分ずつ持ち時間が増える。これによって、指し手を決めるのに時間がかかるリスナー側と、そうでないプロ棋士側の公平性が保たれるというしくみだ。
ところが、対局開始予定時刻の直前になって、将棋会館内のパソコンから投票システムとの通信がつながらず、対局が開始できないトラブルが発生。有志のスタッフが持ち込んでいたモバイルルーターから接続できて事なきを得るという一幕が。ニコ生ユーザー主導のイベントならではの手作り&手探りの緊張感に、筆者も冷や汗をかいたりするなかで、ようやく対局がスタートした。
リスナーの初手▲7六歩に対して、西尾明六段はプロらしく堂々と「なんでもこい」の△8四歩。そこから局面はスルスルと矢倉の定跡形に進んでいく。スタッフからは「プロ相手に矢倉とか大丈夫なのか」という声も上がっていたが、多数決なのでどうしようもない。いずれにせよ、相手はプロである。どんな戦法でも、いい勝負ができれば御の字であるし、本格的な矢倉戦でいい勝負ができれば、勝っても負けても悔いはないのではないか。
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