横浜DeNAは「映画化」で強くなる
ダグアウトの裏の姿まで「見られる」ことで、チームと選手は強くなる。
※「メジャー流」映画製作に横浜DeNAが挑戦」https://nikkan-spa.jp/546627)。
新球団誕生の1年間を描いた昨年に続く、2年連続のこの企画。上映会初日の7日、会場の桜木町ブルク13には約400人のファンが詰めかけた。今週末(14、15日)にも開催される上映会は、既に全席完売となっている。
大スクリーンに映し出される映像は迫力十分で、鑑賞したファンからは、「昨年以上に踏み込んだ内容で、息をするのを忘れて見入ってしまった」(30代女性・さいたま市在住)、「応援するチームの素顔を見ることができ、選手たちをより身近に感じた。来年はもっと球場に足を運びたい」(20代男性・横浜市在住)と大好評だった。中には「明日も来週も来ます!」というツワモノもいた。
⇒【動画】本編未収録「ダグアウトの向こう2013 Short Story」はコチラ https://nikkan-spa.jp/551415
このプレミア上映会では毎回、選手を招いてのトークショーも行われる。7日のゲストは、キャプテン石川雄洋とベテラン後藤武敏。どちらも作品の核となるキーマンだ。 黒革のライダースにブーツ姿で登場した27歳の石川は、いかにも今風の若者といった雰囲気の選手だ。トークショーで来年の意気込みを聞かれても「いや、まだ12月なんで……」と、クールにかわした。作品について、ロッカールームでの姿まで撮られることに「最初は恥ずかしいという思いもあった」という。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=551417 満員のファンを前に「俳優になった気分です」と語った石川は今年、不振で二軍落ちを経験するなど、シーズンを通して苦しんだ。普段は温和な中畑監督が厳しい口調で石川に降格を告げたときも、カメラは石川の姿を背後で追い続けていた。野球選手にとって最も屈辱的な場面のひとつは、文字通り映画のワンシーンとなった。 「撮られていたことは気づかなかった。部屋を出る時にはじめて気づいた」と語る石川は、この「映画化」企画に当初、最も強い抵抗感を示した選手のひとりだったという。それでもチームスタッフは、静かにカメラを回し続けた。 いつどこでも隣についてまわるカメラが鬱陶しい場面も多々あっただろう。しかしそれでも、タイトルの通り「ダグアウトの向こう」の姿までをファンに「見られる」ことは、プロ野球選手・石川を絶対に強くするはずだ。 アスリートに限らず、「見られる」ことは成長のチャンスである。 親がわが子を見守るように、「見る」とは愛情を注ぐ行為である。「見る」側の愛情や期待を感じることで、「見られる」側は襟を正し、成長する。見ることは愛情。見られることは成長のチャンスだ。 この作品は、昨年まで5年連続最下位に沈んだ“ダメ球団”の、ありのままの姿を映したものだ。「ヤラセはひとつもない。あったら(映像を)見て泣いたりしない」(後藤)「絶対に、ヤラセは撮らない。そこは徹底的にこだわる」(三木プロデューサー)。2年の歳月を経て紡がれた彼らの言葉には、フロントと現場の一体感も感じられる。 そして、「見られる」覚悟を決めたベイスターズを一段上のステージへ引き上げるのは「見る」側、すなわちファンの任務だ。 もしあなたがベイスターズファン、いやプロ野球ファンならば、是非この作品を見て欲しい。ベイスターズ、そしてプロ野球界の発展のために。 作品を観たら、その感想を是非周りの人々に言いふらしてほしい。あなたが感じたことをありのまま、どんな意見でもいい。あなたの口コミが誰かの心に響けば、またひとり「見る」人が増えるのだ。 今回の企画は、一見するとファンサービスの一環だ。もちろんそれは間違いではない。 しかしそれ以上に、ありのままの姿を公に晒すことは、選手とチームに成長を促す。その効果はもしかしたら、春期キャンプでの1000本ノックや300球の投げ込みよりも大きいものかもわからない。 幼少の頃、あなたの小さな背中に注がれた周囲のあたたかな視線を、今度は愛するチーム、愛するスポーツに注ごうではないか。選手を強くするのは、良いときも悪いときも見守り続ける「あなたの愛情」なのだから。 ●『ダグアウトの向こう 2013』 ※期間限定一般ロードショーの予定などは作品の公式ページでご確認ください http://www.baystars.co.jp/event/2013/dugout/ <取材・文/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
12月7日と8日、横浜DeNAベイスターズの2013年シーズンを映像で振り返る公式ドキュメンタリー『ダグアウトの向こう 2013』のプレミア上映会が行われた。年間を通してチームに帯同している球団スタッフが、普段は表に出ることのない戦いの舞台裏をカメラに収めた、画期的な作品である。(このプレミア上映会では毎回、選手を招いてのトークショーも行われる。7日のゲストは、キャプテン石川雄洋とベテラン後藤武敏。どちらも作品の核となるキーマンだ。 黒革のライダースにブーツ姿で登場した27歳の石川は、いかにも今風の若者といった雰囲気の選手だ。トークショーで来年の意気込みを聞かれても「いや、まだ12月なんで……」と、クールにかわした。作品について、ロッカールームでの姿まで撮られることに「最初は恥ずかしいという思いもあった」という。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=551417 満員のファンを前に「俳優になった気分です」と語った石川は今年、不振で二軍落ちを経験するなど、シーズンを通して苦しんだ。普段は温和な中畑監督が厳しい口調で石川に降格を告げたときも、カメラは石川の姿を背後で追い続けていた。野球選手にとって最も屈辱的な場面のひとつは、文字通り映画のワンシーンとなった。 「撮られていたことは気づかなかった。部屋を出る時にはじめて気づいた」と語る石川は、この「映画化」企画に当初、最も強い抵抗感を示した選手のひとりだったという。それでもチームスタッフは、静かにカメラを回し続けた。 いつどこでも隣についてまわるカメラが鬱陶しい場面も多々あっただろう。しかしそれでも、タイトルの通り「ダグアウトの向こう」の姿までをファンに「見られる」ことは、プロ野球選手・石川を絶対に強くするはずだ。 アスリートに限らず、「見られる」ことは成長のチャンスである。 親がわが子を見守るように、「見る」とは愛情を注ぐ行為である。「見る」側の愛情や期待を感じることで、「見られる」側は襟を正し、成長する。見ることは愛情。見られることは成長のチャンスだ。 この作品は、昨年まで5年連続最下位に沈んだ“ダメ球団”の、ありのままの姿を映したものだ。「ヤラセはひとつもない。あったら(映像を)見て泣いたりしない」(後藤)「絶対に、ヤラセは撮らない。そこは徹底的にこだわる」(三木プロデューサー)。2年の歳月を経て紡がれた彼らの言葉には、フロントと現場の一体感も感じられる。 そして、「見られる」覚悟を決めたベイスターズを一段上のステージへ引き上げるのは「見る」側、すなわちファンの任務だ。 もしあなたがベイスターズファン、いやプロ野球ファンならば、是非この作品を見て欲しい。ベイスターズ、そしてプロ野球界の発展のために。 作品を観たら、その感想を是非周りの人々に言いふらしてほしい。あなたが感じたことをありのまま、どんな意見でもいい。あなたの口コミが誰かの心に響けば、またひとり「見る」人が増えるのだ。 今回の企画は、一見するとファンサービスの一環だ。もちろんそれは間違いではない。 しかしそれ以上に、ありのままの姿を公に晒すことは、選手とチームに成長を促す。その効果はもしかしたら、春期キャンプでの1000本ノックや300球の投げ込みよりも大きいものかもわからない。 幼少の頃、あなたの小さな背中に注がれた周囲のあたたかな視線を、今度は愛するチーム、愛するスポーツに注ごうではないか。選手を強くするのは、良いときも悪いときも見守り続ける「あなたの愛情」なのだから。 ●『ダグアウトの向こう 2013』 ※期間限定一般ロードショーの予定などは作品の公式ページでご確認ください http://www.baystars.co.jp/event/2013/dugout/ <取材・文/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
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