元小結・舞の海が語る“小が大を制する極意”
この世は「弱肉強食」の世界である。スポーツの世界でも、強い者が弱い者を圧倒する。しかし、時として弱者が強者に打ち勝つことがある。そのドラマに人々は魅了され、スポーツ中継に釘付けになる。
その一例が、90年代に相撲界で活躍した元小結の舞の海秀平氏だ。
幕内力士の平均体重は2012年の時点で162.4キロであり、相撲界では小さい力士は不利だと思われがちだ。しかし、舞の海氏の体重は現役時代97キロで身長も169センチという小兵だったにも関わらず、後に横綱となる曙(身長204センチ・体重230キロ)や大関・小錦(身長183センチ・体重284キロ)などの巨漢を投げ飛ばした。
これらの取組は伝説になっているが、なぜ舞の海氏はこうした巨漢力士と互角に勝負できたのか? 彼に“小が大を制する極意”を聞いてみた。そのポイントは「勝負脳を磨くこと」であるという。
「相撲というのは体が大きければ良いかというと、決してそんなこともなく、小さいと不利かというとそうでもありません。必ず大きい人にも、強いところと弱いところがあり、同じく小さい人にも強いところと弱いところがあるのです」
舞の海氏はどんな大きな力士にも長所と短所があり、それは小柄な力士も同じだという。自分と敵の強い点と弱い点を徹底的に分析し、いかに自分の強みを敵の弱点にぶつけるか常に考えていたという。
この自分の強みと弱さを自覚することが勝つための第一歩なのかもしれない。短所と思われた小柄な身体はたちまち“小回りが利く”という武器になり、舞の海氏は「技のデパート」と呼ばれるまでになる。猫騙し、八艘飛び、さらに丸い土俵を「くるくる舞う舞の海」として、ご記憶の方も多いのではないだろうか。
また、舞の海氏は簡単に諦めずに「何か方法はあるのではないか」と考え続けることが大切だという。大相撲入りを決意した当時、新弟子検査の合格基準では身長が173センチ必要だったが、舞の海氏は4センチ足りなかった。
足りなかった身長を伸ばすため、「身長を伸ばしてあげる」という老人に大枚を払いながら騙されたり、たんこぶをつくるために木のバットで後輩から頭を殴ってもらったという笑えないエピソードもある。
何をやっても徒労に終わり、万策尽きたと思われた。だが、舞の海氏はそれでも考え続け、最後に辿り着いたのがあの驚くべき方法だった。
「頭にシリコンを入れ、何とか身長をクリアすることができました」
ここまでやるのが「諦めない」ということなのかもしれない。何があっても諦めないという執念が、その後の彼の活躍の原点となった。
今月発売された舞の海氏の最新刊『小よく大を制す!勝負脳の磨き方』(育鵬社)では、こうした心構えや考え方が詳しく紹介されている。ビジネスの世界にも通じる“勝つための極意”が満載の1冊だ。 <取材・文/吉留哲也>
『小よく大を制す! 勝負脳の磨き方』 現役時代、大型力士らをなぎ倒してきた「平成の牛若丸」が初めて明かす! ビジネスにも通じる“勝つための極意”とは―― |
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