「最幸の志事」「顔晴ろう」…SNSで見かける“言い換え言葉”に拒否反応の声

「ありがとうご財増(ざいま)す」、「望年会」、「輝業(きぎょう)」、「顔晴る(がんばる)」――。

 SNSなどで、こんな言葉を見かけたことはないだろうか?

「最幸の志事」「顔晴ろう!」…SNSで見かける“言い換え言葉”に拒否反応の声

イラスト/大ハシ正ヤ

 実はこれ、自己啓発本や自己啓発セミナーなどの愛好者が好んで使う当て字である。やたらと横文字を連発するのもどうかと思うが、こうした当て字もSNSでは微妙な空気を醸し出す。

「同僚が自己啓発セミナーに参加するたび、『最幸(さいこう)の志事(しごと)をしようぜ!』と連発してウザイ」(32歳・男性)という声や、「自己満足の塊のような当て字は、宗教くさくて気持ち悪い」(34歳・OL)、「本人は上手いこと言っているつもりでも、ただイタいだけ」(41歳・男性)など、「生理的に受け付けない」と拒否反応を示す人々も多いのだ。

 しかしなぜ、自己啓発ではこのような“言い換え言葉”が多用され、支持されているのだろうか。

 コラムニストの小田嶋隆氏は、「基礎学力のない人間ほど、薄っぺらな自己啓発用語にハマる」と一刀両断する。

「そもそも、自己啓発で使われているこれらの言葉は“ただのゴロ合せ”どころか、ワープロの変換ミスに近いものです。こういう芸の無い言葉にあっさり感動してしまうのは、学業を疎かにしてきたからです。義務教育の勉強は、“物事をさまざまな角度から見る力”や“見抜く力”を養うものです。その力がないと大人になっても本質を見抜くことができない。自己啓発で使われる中身のない言葉の言い換えにコロッと引っかかってしまうのです」

 また、学力のなさに加え「非正規雇用者の増加や、未婚率の上昇も自己啓発の勢いを増す原因になっている」と小田嶋氏は語る。

「時代を問わず、『自分探し』や、『自分の可能性を模索する』といった類の新興宗教や自己啓発にハマる人たちの多くは、人間関係や職業的背景が不安定な20代の若者でした。それが、今では30代でも定職に就かず、結婚もしていないのが“普通のこと”になってしまった。20代のような不安要素を引きずった30代が、本当の自分を探すために自己啓発にハマり、結果的に単純な気付きで感動した造語を多用する……という悪循環に陥っているのかもしれません」

 自分が感動した言葉を周りに広めたい! という気持ちもわかるが、「意味がわからない」「理解するのに時間がかかって面倒くさい」と、冒頭のように拒否反応を示す人々が多いのも事実だ。

「本来はこれら自己啓発の言い換え言葉は、仲間内やセミナーなど閉鎖的な場だけで通じるような言葉だったはず。それを、『俺ちょっと洒落た言葉知ってるんだぜ』というような軽い自己顕示欲から公の場で使ってしまうのは、葬式にアロハシャツで参列しているようなものです。閉鎖的な場ならば、特殊な言葉も一種のサインとして仲間意識を高める効果もあります。でも、TPOを読まずに日常生活で多用してしまっては、周囲に迷惑をかけるだけ。もしも仮に同僚や部下に自己啓発用語を使う人間がいたら、『自分に酔っている浅い人間だな……』と苦笑いでスルーしましょう(笑)。彼らは自尊心も高いので、触らぬ神に祟りなしです」

「他とは違う自分」を演出したくても、置かれているのは一目ではなく、“距離”かも知れない。

 12/16発売の週刊SPA!「許せない[意識高い系用語]の境界線」では、上記のような自己啓発系言い換えのみならず、頭よさげな言葉やカタカナ言葉、英文略字の使用が、どこから人を苛つかせるのか? どんな属性の人が発するとイラッと来るのかをアンケートと街頭調査からリサーチしている。何の気なしにに使っているあなたの「言葉」は大丈夫だろうか? <取材・文/週刊SPA!編集部>

【小田嶋隆氏】
コラムニスト。日経ビジネスオンラインで連載「ア・ピース・オブ・警句」、著書に『ポエムに万歳!』(新潮社)、『場末の文体論』(ミシマ社)など

週刊SPA!12/23号(12/16発売)

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