雑学

平山夢明「酔っ払いの間では股間をベタベタにするのが流行っている?」

◆昨今の酔っ払いさんたちの間では股間をベタベタにするのが流行っているのでしょうか?

 昨日、ベランダに留まっているカラスが自分を見ても全然、逃げようとしない。太々しいカラスだと怒りだしたおじいさんが小石を投げつけていたんですよね。そしたらさすがに気配を察して飛び立ったところのカラスの胴体に当たって石が跳ね返り、じいさん顔面直撃→うずくまりという場面に遭遇した平山です、みなさん、お元気ですか? 

 ちまたはそろそろ冬将軍到来+鍋+年末気分というわけなのでしょうか。最近はやっためたらと泥酔している人が多いような気がするんですがどうなんでしょうか? 先日も終電で帰りまして駅の階段を下りようとしましたら、べろんべろんの彼女が心配顔でそばについている彼氏を睨みつけながら「なんだよ! なに心配そうな顔してんだよ!」などと怒鳴っているので、これはまた素晴らしい光景に出くわしたものだとつかず離れずにいますと、とにかく彼女は自分が大して酔ってもいないのに心配そうに手を出して階段を下ろそうとする彼の〈優しさ〉が気に入らないようでやたらと反発しているのです。ふたりとも年は三十前後といった感じ、女性はボブで白いスカート、ブラウスにジャケット、彼はもうちょっとラフな作業着姿。

 駅の階段はご存じのように脳天を打ちつけると出血する構造になっていますので彼女のようなヨタヨタ歩きは大変に危険なんですが、とにかく本人は自力でゆらゆらと下りようとします。「あ! あぶないよ!」。大きく体勢を崩しそうになると彼が手を出します。すると彼女は手をバシッと払いのける仕草をし「ばーろー。酔ってるわけがねえだろ。フリだよ、フリ。酔ってるふり!」なんて叫ぶ。しかし、それでも段々、躰の揺れが大きくなってきたので、さすがに見ておられなくなったのでしょう、腕をガシッと掴んだのです。

立ちグソ すると「いたいたいたい! いてえよ!」と腕を振りほどくと「酔ってねえって言ってるだろ!」と叫んだ瞬間、びちぶちびちぶちと粘着的な音と共に何かしちしまった感じになったのです。その瞬間、遠巻きにしていた野次馬からも「おお」というどよめきが起きまして、なぜか彼女は自分が酔ってないことを照明するために〈立ちグソ〉をされたわけですね。スカートはなんだか変な水っぽい染みとオレンジと茶の斑模様。すると彼は突然、唄うように「あ!ほんとだあねえええ」と云うと彼女を置いて駆け去っていってしまったのが印象的ではありました。

 その後、彼女はその場に座りこむと階段にもたれかけてがあがあイビキをかいてしまわれました。と、こういうわけですが、また別の日にも三人連れのサラリーマンがホームで完全泥酔して床に倒れ伏したまま床を舌で舐め回している仲間を両側から抱き起こそうとしていたのですが、このふたりと倒れているひとりの全員が股間がべっちゃべっちゃに濡れていたのですね。「しっかりしろよ! 床は舐め物じゃないぜ!」なんて云いながら。一体なんなんでしょう、酔っ払うと股間をべたべたにするのが今年の流行りなんでしょうか? 

 それがナウいんでしょうか? あまりにも不思議すぎたというか怖ろしかったので書いてしまいましたが、こんなことが全国的に流行っていたら忘年会シーズンの終電はどうなるんでしょうか? 考えただけでもゾッとします。股間をべとべとにした人がホームに溢れていて、それが一斉に電車に乗り込んでくるなんて考えただけでもソットーもんじゃありませんか。車内で、上からリバースなんてのもよく見かける光景ではありますが、そんなこんな用に忘年会シーズンだけは「べとべとじゃない人専用車両」というのを作って戴きたいと思ったりしてます。ほんと、股間べとべともどうかと思いますが、面白いモンです。

平山夢明【ひらやまゆめあき】
61年、神奈川県生まれ。10年刊行の長編『ダイナー』(ポプラ社)が、第13回大藪春彦賞を受賞。精神科医・春日武彦氏との不謹慎世相放談『無力感は狂いのはじまり~狂いの構造2』も、扶桑社新書より絶賛発売中!

― 週刊SPA!「平山夢明のどうかと思うが、面白い」 ―

イラスト/清野とおる 撮影/寺澤太郎

どうかと思うが、面白い

人気作家の身辺で起きた、爆笑ご近所ホラー譚

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